0・結成!担々団体編

あ…えと、

ワタシが憑いて最初に光景が「これ」ですまない。


焼けた集落…散らばる遺体…鉄分を帯びた潮の匂い。


一体何があって「こう」なったかを説明すると…、


鯵啞の革命軍が敗走してきた、この集落。

国王軍に少しでも負担を与える為の苦肉の策で、


糧食を奪った後ここに火を放った。


当然、南の民族たちは爆薬を用いて抵抗し――

家々は崩れ人々は死に、悲惨な光景に…最早生き残りは居ないだろう。

ワタシとキミが失意の想いでいると、


「【はは…これは相当の、


カオスだったんだろうなぁ…………】」


非常に残念そうな顔で、立ち上がる子供。

憑いているのは…。

「【まァボクがリーヨウを好き勝手できのも

今のうちだ】」


この子も可哀想に。

【火種】は自らの性癖を隠す気がない付喪神だ。


よりによって争奪戦で勝ったのが【火種】なんて。



――争奪戦の景品は、ワタシの数えられる限りだと32が生物だった。


この集落にでさえ無数に転がる遺体にんげん死骸どうぶつの中で、

何故選ばれたのが32なのか?


理由は「他より綺麗だったから」。


ちょん切れていたり首が繋がっていなければ使い物にならない。

だからこの32体なのだ。


これだけ死者が居る中で、32しか「綺麗に死ねない」のも気の毒だが…。

もっと気の毒なのは、


この子供・リーヨウだろう。


【火種】はリーヨウの身体でフラフラと銃声の鳴った方へ向かう。



きっとカオスが欲しいのだ。


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


…足の感覚がある。


手も…どうやら腕に顔を伏せて眠っていたようだ。

となれば心臓。

左胸に当てた掌から、ドクドクと脈を感じる。


「……五体満足」


兵士が目を開けると目に入ったのは

狭苦しい会議室の机、兵士の顔を見つめてくる二人。

「やっと起きた!」

「貴方いちばん寝ていたよ」


「もーそこの人何も喋んないから、

ようやくちゃんと話し合いできるね!」

そう言って指した先は、兵士の隣の席。


見ると、無表情で背もたれに力を預ける姿が。

「………」

随分薄汚れた格好の彼は、口を開く気配もない。



『薄汚れた』は兵士にも言えるところだな。


おさがりの軍服は、

逃げ続けた様子を表すかのように灰まみれだ。


そこで兵士は、違和感に気づく。


「…血が見当たらねぇ」


(オレ、あの瞬間、敵陣に撃たれて……)

そこまで思い出して、もう一つ気づいたこと。


「死んでない?」


兵士の一言に、衝撃の台詞が返ってくる。

「【あ~そうだな…結論から言うと、貴方達は死にました】」


「⁉」

「………」

「じゃあなんでここに居るの⁉そもそもここって……」


「【は~い落ち着いてね。】まずは名前。私は苣

【そして付喪神の朽葉!よろしく~】」


…自己紹介が二人分?ワタシはこの【名前】に聞き覚えがある。

「私達…その、

【ふたりで1つなんだ~、ふふっ!】」

どちらも同じ声だが、声色からどちらが話しているか分かる。


驚き戸惑いつつも、リーヨウも名乗る。

「ボクリーヨウ。つくもがみ、って

夢できいたかもしれない!」


「夢…だったらよかった」

兵士の隣の男性が、そう呟く。

「やっーと喋った!おなまえは?」

「アディル……。」


相変わらず虚ろな顔つきだが、

【名前】が訊けて何よりだ。


【朽葉】という奴は、いつでも楽観的な付喪神。

【石土】の発想は冷酷で、正直恐い印象しかない…。


そして、視線は兵士に集まる。

「——————なんにも飲み込めねぇ」

兵士は震える声で続けた。

「お前ら全員…死後?なのになんで、

なんでそんなに冷静なんだよ…⁉不安じゃないのかよ、

神とか聞いたことねぇの、オレ、だけ、なんだよ……ッ」


言葉と共に、彼の顔は真っ青に染まっていく。

「……もしかして」


「【付喪神との対話を、終えていない?】」

「…?」


「ええとね…」


『夢』というのは、

付喪神が憑いた者の記憶を整理するために見せる対話のこと。


その様子を、キミも覗いてみると良い。


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


「気持ちの整理、できないや。」

当たり前だよ…あんな死、経験したら誰だって……助けられなくてごめん。


「優しいね

貴女は一体?」


私は【朽葉】。貴方の人生、ずっと見ていた。


「そっか」


「でももう、見なくていいよ

だって……終わったもの」


…違うんだよ苣。

始まるんだよ。

「…どういうこと?」

それはね…。



――事情を訊いた途端、目を輝かせたね!

希望の宿った苣の眼差し。私はそこに惚れた。


「だって…だって私、

まだ生きてていいんでしょ…⁉」


もちろん。

貴方は貴方のまま、生かし続ける。


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


「殺した」


「おまえが殺した。おまえの土壁がフローを…」

――責任を押し付けようとするのはやめろ。


おまえの手が大石を振り下ろし、主人を殺した。

おまえの足が土壁を生やし、大勢を殺した。


つまり、どの命もアディル…おまえに奪われたのだ。


「…!俺はむしろ被害者だよ!

みんなを逃がすために立ち向かって…それで…」


その結果がだろうが。


「っ……こんな世界、あっていいのかよ」


そうだ怒れ、アディル。

気に入らない現実は暴力で跳ね除けるのだ。


「…いやだ。おまえみたいな奴の言いなりにはならない。」


我儘な子供かおまえは。

もう良い年齢だろうに…


「おまえに俺の身体は使わせない…こうしてやるから」


…⁉


おまえ、を抜き取る気か。

そうすれば、おまえも失血死だな。


「……いいよ


――どうせなら苦しんで死にたい」


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


ほお?覚えていないのかい?


「うん。名前がリーヨウ、ってとこしか思い出せないや」


なんと勿体ない!あの現場はだったのだよ♡


「……えぇぇ?」


次々起こる戦乱に困り果てる姿…ああ、思い出すだけで…♡

幼き低民・リーヨウよ。カオスは良いぞ


「分からんぞ

ねぇ、ボクってどうなっちゃったの?」


リーヨウ。キミはもう死んでいる。

しかし安心したまえ♡


ボクが憑いているぞ。


「おお、頼もしい…のかな?おなまえ何て言うの?」


一度しか名乗らないからよく聞け低民!

ボクは【火種】。付喪神のヒダネである♡


「分かった!じゃあ、

どうやったら家に帰れる…いや、家も知らないや

これからどこへ行こうか?ヒダネさん!」


"さん"とは良い響きだな♡

上身分のボクにぴったりだ!…そうだな、このボク任せておけリーヨウ!

幼いキミの仲間となる人間を探そう。


「なかま?」


そうだ。同じ【なにか】を持つ者だ。

同じ「苗字」であれば家族、同じ「言語」であれば同郷だ。


「ん!それなら分かるよ!」


ああ。

【付喪神】の憑ける者を、ボクが直々に探してやろう。


なにせキミは、ボクが見初めた人物なのだから…


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


「霙、飲み込めた……?」

苣の方の人格が、恐る恐る顔を伺うと…

「分かんね」

「そうだよね~!」


リーヨウは賛同の声を上げる。

「オレの中にも付喪神が居て、そいつが

オレを生き返らせた…?」

「【合ってるよ~】」

「つーかお前は二重人格、でいいんだよな」

霙が【朽葉】の方の人格に話しかけると、


「うわあああああああ!!!

に、二重人格とか言うのやめて!本気で!」

苣の絶叫にビクッとした霙は言ってやる。

「な、なんだよ…」


「…23にもなって、その…

二重人格っ、だとか名乗るの恥ずかしすぎるし……///」

それだけ言って、机に伏せてしまった苣。

「へぇ、だってさクチバさん」

「イヤァァァァ!!!

二度と…ッ!二度と【朽葉クチバ】に話かけないで!

あと貴女も出てこないで!」


ピンポーン。


「なに、この音」

「【チャイム。この国の、訪問を知らせる音だよ~】

言ってる場合じゃないから!私、出てくる」


【朽葉】は苣と共に、玄関へ向かった。

「はーい」

玄関には、静かな佇まいの女性が立っていた。

「伝言を届けに来ました」


「……伝言、とは?」

「差出人、プロジェクト・L」

彼女はすらすらと内容を伝えた。


『不死身の四人へ。

プロジェクト・Lの名において、命令を下す。

・おれの調べもの

・おれが必要な物を奪ってくる

・消して欲しい組織を潰す

など、おまえらにはうちの#潜入部隊になって貰う。

今はまだ知らない物だらけだろうから、まずは生活に慣れて欲しい。』



「…めちゃくちゃじゃない?」

「滅茶苦茶だな」

なかなか横暴である。


しかしまあ、チャイムのように彼らが知らない物があったのも事実で、

そのことを気遣って時間をくれたのだろう。

「彼はここの事務所を買い、あなた達に生きる場所を与えました」


…なんと。

確かに一階から三階を覗いて見ても、ここは鯵啞より随分整った設備で…


この差出人、滅茶苦茶親切じゃないか?


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


「ひぇぇ寒~!」


二月の冬空、並んで歩く四人組。

ひとしきり事務所内を見て回ったので、

「ボクお腹空いちゃった」

買い出しに行くことにした。


「…と、言ってもね」


口を閉ざすアディル、霙とは対照的に、会話をする二人。

「道が分かんないや」

苣の発言に、リーヨウは『お手上げ』のポーズ。


「取り敢えず、人が居るところについていこう【いこ~】」

鯵啞では見れない高い建物や

西洋屋敷。


何より一番驚きだったのは、車。

「なにあれ…カラフルなのが走ってる!」


自在に曲がって止まる姿に、ワタシも興味を惹かれた。



「ん、人が集まってる」

黒い車の辺りに、黒パーカーの集団が集まる。


…怪しいにも程がある。それをリーヨウは、

「お店の場所訊いてみようよ!」

話しかけようとしているのだ。


周りを見渡すと、やけに人気ひとけが無い。


「はぁ…?」

「ヤバい気がする」

「……ほんとに大丈夫?」

「そうだね、まずは挨拶から!にちはー!」

リーヨウが明るく、のっぽな黒パーカーに話しかけた。


「———どうした?ガキ」

一瞬、睨み付けるようだった彼の視線は、張り付けた笑顔へ。

「アニキ~」

「こっち積み終わりました~」

「バカ!今来んじゃない!」

車のかげから出てきた男に向かって、声を荒げた。


彼の名前はべラント。

どうやら『アニキ』と呼ばれているようだが…?


「えっと…ガキ。何か用か?」

「んーとね、食べ物買えるお店に行きたいんだけど……」


「お兄さん積んでたの?」


リーヨウの目がべラントを見つめ、

「ッおい!手前らのせいで勘付かれただろ!」

「やっぱり何かしてるー…

ちょっと見せてよ」


その時、べラントの目にアディルたちの姿が映った。

「おい……手前このガキの保護者か?

だったらちゃんと言っとけ


——黒い話には、関わるなって」


チャキ…

黒パーカー集団は一斉に拳銃を構えた。

「やっぱり危険だ…!」

苣は、銃を向けられたまま四角い板を持ちだした。

「警察を呼ぶ暇を与えるとでも?四人とも縛っとけ」

「了解ですアニキ!」



「———ほんとに失うもの、なくなっちゃった」

縛ろうとするその腕を、ガシッと掴んだアディル。

「てめぇこの状況で抵抗するとか死にたいのか!!!」


バン!

聞き覚えのある音に、霙は萎縮する。


横を見ると、アディルは足を押さえ倒れている。

その様子は酷く、苦しそうだ。

「………どーしよ【朽葉クチバ】」

「逃げようなんて考えるなよ?」


苣は三人に目線を送ると、

パーカーの男の腕を振り払おうとした。


「…無駄だな」

「ッ痛……!」

その努力もむなしく、腕を捻られた苣。リーヨウも抵抗するべく、

「——【火種ヒダネ】さんっ!」

お団子を燃やした。


「丁度いい、この火で始末できるな」

死体を出しても大丈夫だと判断したべラント。


バン!バァン!


「………大丈夫か」


「アディル…!」

血まみれの足で立ち上がったアディルは、

更に腹に二発食らってよろける。



…どうして。どうして立ち上がるのだろう。

立ち上がれさからえば、更に…痛いのに。


「仲間は俺よりもっと……ッ!痛ぇんだよ!!!」


褐色の仲間たちを想い、倒れないよう耐える。

「仲間はみんな失った…仲間は、みんな殺された」


「だったら俺は…!何を守ればいいんだ‼」

目を見開き、必死に訴えかけている。



「【三人も仲間が居といて、恐いものは何?】」


【朽葉】による軽い一言。

それを聞いたアディルは、背負ったが軽くなった気さえしてきた。


「俺も…仲間の、一員」


口に出すと自覚は強くなり、

「三人も、俺が守りたいもの」

…アディルが口角を吊り上げる姿に、黒パーカー集団は恐怖。

「こいつ…なんで立ってやがる!」


その恐れと躊躇いを見逃さず、

「【石土セキド】」

「っうお⁉」


次々と地面から土壁を生やした。そうして姿を眩ますと、

「走るよ!」

仲間にそう呼びかけるアディルの身体には、

が見当たらなかった。


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


「チッ…どこ行きやがった

知られた以上、逃がすわけには…!」

遠くで、怒るべラントの声。


痕跡を残さなかったというのに、正確に追ってきたものだ。


四人が逃げてきたのは、小さな公園。

日が沈みかけているからか、子供は居なかった。

「…苣、腕は大丈夫?」

「アディルの怪我は…」

「大丈夫!バク転できるくらいだよ!」

「やったら私達見つかるからね⁉」

こんな状況だからこそ、アディルの笑顔が心強い。


「帰りたい……」

「俺が無事に帰すから大丈夫。任せて!」


霙は投げやりに言い放つ。

「…何を根拠に、そう言えるんだよ」

「うーん、俺さっきみんなのこと身を挺して守ったじゃない?

ほら、銃で撃たれて」


「そんなの……痛くねぇのかよ」


本当に、その通りだ。

【石土】が居なければ、今頃…。


「ううん、大丈夫!

仲間のためなら!」


リーヨウはアディルが土壁を出していたことを思い出す。

「ねぇ!ボクもさっきの火、また出せる?」

「【できるよ~

困ったときは、【名前】を呼ぶの。】」


試しに、苣に名前を呼んでもらう。

「【朽葉クチバ】!」

すると枯れ葉の嵐が舞う。



…しまった。

「いたぞ!生かして帰すな!」

「「「はいアニキ!」


黒パーカー集団に、嵐を目撃されてしまった。

銃声が響くその前に、

「守れ【石土セキド】!」


再び土壁を生やすアディル!

「この【武器】使いこなせてきた!」

「ボクらも戦うね!」

食らいつつ銃を奪おうとするリーヨウ、なんとかしようと考える苣。


ドン!ドンドンドン!


「ッ大丈夫だよみんな、【石土セキド】……ッ!」

純粋な弾数に押され、【名前】を呼び続ける。


しかし。


パァン……!

付喪神の疲弊の隙をつかれ、ヘッドショット!


【石土】の回復が遅れ、仲間を守る壁も作れなくなった。

「た、助けて【朽葉クチバ】…!」

「…んだこの枯れ葉」

「ぐあ……っ!」

枯れ葉は攻撃性に欠け、簡単に防がれる。


「い"ぃ加減にしてッ!」

拳銃を奪おうとしていたリーヨウは撃たれ、残るは…


「手前だけだな、あとは」


撃たれても死ねない身体と、眼前に広がる惨状に絶望している。

「…最期の最後まで大人しいな」

「…………」

完全に殺してくれ、という目でべラントを見る霙。


…ああ、そうだった。


彼はまだ一度しか死ねていないのである。




鯵啞革命戦争。

国民にとってそれは、分かり切った開戦だった。


まず長男のリクが徴兵。残ったのは刀だけ。

次男のカイが戦場へ。残ったのは片方の靴だけ。

三男のクウが兵役。残ったのは…何もない。


遺体も残らない程、酷い爆撃だったことが分かる。


四男の霙が十五になった年に、


長女のソラが井戸に身を投げた。


…独り残された霙にはもう、後が無い。


こんなのもう、


死にに行けと云われたようなものではないか―――



「手前に一つ、教えてやる」


苣は髪を引っ張られ、リーヨウとアディルが倒れ込んでいる。


「この世界闇金業は手前らガキが

首突っ込んじゃいけねぇ。」


べラントが頭に銃口を押し付けてきた。


また霙は、銃によって死ぬのだ。



―――『困ったときは、【名前】を呼ぶの。』


「…オレ、名前なんて知らねぇよ」

台詞とは裏腹に、

「⁉」

霙の足元は凍り始めた。


それに気付かないべラントが続ける。

「これに懲りたらになんて一生関わらないことだな」


「……ろや」

「あ?」

「もっと早く教えろや。【氷柱ツララ】」


パキパキ…

「なっ、なんだ、氷⁉」

「あーあ【氷柱ツララ】。この調子じゃオレまで

戦わなくちゃいけねぇわ。……嫌だなぁ」


スパァン!


身動きが取れないべラントの、

銃を弾き飛ばした。


その拍子に、霙の耳飾りがそよぐ。


宙姉そらねえの形見である。


「み、みぞれ…!なんと素晴らしい、

カオスっぷりなんだ…♡」

黒パーカー集団を混乱させた霙の一幕に、

リーヨウ…いや【火種】が恍惚とした顔を向けた。


その証拠に、リーヨウのお団子がほどけている。

次に、

強く引っ張られたせいで苣の長い髪が舞う。



「マ、マズイロングヘアだ!」

「アニキの目を逸ら…いやもう手遅れだ!」

「は……?」

霙が振り向くと、


赤面したまま口をぱくぱくさせるべラントの姿が!

「お前、どうした…?」

「バカか!アニキはロングヘアの人に弱いんだよ!」


それを聞いて、ニヤリと悪い顔をする霙。

「【氷柱ツララ】…」

逃げられないように、手をしっかり凍らせた。

ついでにノールックで黒パーカーの部下たちも凍らせとく。


べラントの前に長い髪が、リーヨウと苣が迫りくる。

「へぇ…真っ赤な顔、意外かも♡」

「なんでロングヘア弱いの?」

毛先をくるくるさせる二人から、逃げようにも逃げられない。

涙目になりながらも、


「だって……!ながいかみ、

ふわってトリートメントのかおりするし…//」

と答える。リーヨウは満足げ。


「…アディル」

「ルーでいいよ」

「ルー。動けるか?」

「もちろん大丈夫!」


「よし。この髪フェチに一発どうぞ。」

「任せて!」

ルーも歩み寄ってきた。


「鯵啞人はね、『やられたらやり返す』が得意技なんだよ」

「なんだっけ、でんぐり返し?」

「どんでん返し、だろ。」

「だから殴っても大丈、ぶっ!」


「ぐは……ッ!」

まるで容赦の無い担々団体!


結局、べラントたち"バッテン承知"は警察に引き渡されたのであった。


        〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇


「は~ただいま~~」


階段を上がり、玄関から家に入る。

事務所ここが担々団体の"帰る場所"ということが分かる。


「うう…今日はすっごい疲れた」

あちこちにできた銃跡のせいで、身体が重い団員たち。


「特にルー。

あんま自ら怪我しに行くなや」

「はーい……大丈夫だって言ってるんだけどなぁ」

ルーの痛みを心配する霙と、

困り顔のルー。


リーヨウがぼふっとソファに身体を預けると、

「なんだこれ柔らかっ」


プロジェクト・Lの用意した品はすごい。


「ここに飾っていい?」


警察から貰った感謝状を、雑に飾ろうとするな。苣。


…そう。

彼らはひとつ、団結して成し遂げたのだ。


生まれも年も違う、他人が四人。

それでも団結できるコイツらは、強い。

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