第8話

あたしは恐る恐る顔を上げながら、路地の隙間を凝視してしまっていた。



そこで人がひとり、ぱったりと倒れており。



その倒れた人の隣では、ナイフ片手に虚無の眼差しを下ろす男が突っ立っていた。



つまり、殺人現場に居合わせた。



その理解が追い付くことは、短時間では無理だったし。



そもそも理解することをあたし自身が拒絶していた。



逃げればいいのか、悲鳴を上げればいいのか、それとも110番をしたほうがいいのか。



そんな冷静さもなく、ただただ非現実な光景に立ち尽くしていたのだけど。



不意に目の前の男があたしの存在に気付き、軽く舌打ちをしたのである。

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