第6話 東京孤立
濃霧の中で起きている事案は未だに不明であった。
警察と消防は濃霧内には命に係わる危険が存在し、立ち入りを禁止とした。
濃霧の中では火災が起きているのか、炎の灯りがチラチラしている。
だが、誰も助けには行けない。行った者の全てが消息を絶っている。
これは海上においても同様であった。
海自と海保、海上警察は東京湾からの脱出を試みていた。
濃霧は湾を閉ざすように厚く壁となっていた。
海自は小型無人飛行機を投じて、濃霧へと突入させる。
リアルタイムにカメラ映像が護衛艦に送られる。
濃霧に突入した無人機は突如として電波障害を発生、コントロール不能となった。
外からの観測で濃霧内で無人機は電撃にて、爆散したとなった。
この事から濃霧が電波障害の原因であり、濃霧内ではかなり高圧の放電現象が起きており、侵入者は電撃を受けて、大半は破壊されるのだと結論付けられた。
この報告はすぐに避難を終えた総理に届けられる。
「つまり・・・東京を覆う濃霧によって、我々は完全に孤立した事になるのか?」
総理の言葉に閣僚たちはゴクリと息を飲む。
「たぶん」
報告をした防衛省の事務官は困惑した表情で答える。
「それで・・・原因は新宿に突如、現れた巨大構造物かね?」
「未確認ながら・・・たぶんそうかと」
「だろうな。あれは宇宙から来たのか?」
「いえ・・・どこから来たかは・・・」
「地球上の科学力であれは無理だろ?」
総理の言う通りだった。新宿の多くを潰すほどの巨大な構造物を一瞬にして置くなんて技術は地球には存在しない。今なら誰もが宇宙人の存在を信じる。
「現在・・・巨大構造物から出て来たと思われる獣と警察が戦闘中。獣は一般市民を虐殺しながら、周囲へと進んでいるそうです」
「獣の目的は人間の殲滅か・・・だったら核弾頭でも落とせば良かったのにな・・・」
「放射能汚染はさすがに宇宙人でも耐えられないんじゃないですか?もしくはなるべく我々の文化や生産力を確保した上での制圧を考えているとか」
防衛大臣の言葉に総理は疲れたように頷く。
「なるほど・・・無傷でこの星を乗っ取るつもりか。舐められたもんだな」
機動隊は新宿から撤退をする。
獣の行動は人を襲う事だけの為、足は速いがすぐに追うのを止める特性があった。
「戻ったら、銃弾を全て吐き出させて、全員の武装をさせてください」
機動隊の隊長は本庁の警備部長に報告を上げる。
この異常事態に警備部長も困惑していた。だが、相手が兵器となれば、とても警察が相手に出来るはずもなく、これ以上の新宿への警備は危険では無いかと思考する。
その時、警視庁長官が国家公安委員会会長と会議室に戻って来た。
「警察は一般市民の避難誘導と治安維持に総力を挙げる。新宿は自衛隊が対応する。自衛隊の移動が円滑に行われるように幹線道路の整理を急がせろ」
警視庁長官の言葉に警備部長は安堵した。
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