『日々さよ。』の執筆裏話

 ということで、今回は拙作『この日々にさよならを。』のお話をしていこうと思います。

 カクヨムコンにエントリーしているので、未読の方は是非手にとってみてください。

 このエッセイには終盤〜最終話の内容も含まれます。



 物語を思いついたのは、ある年の数学の授業中でした。この時点でわけがわかりませんね。真面目に授業を受けなさい、と言いたい。


 自分はキャラクターの外見が出来上がっていないと物語を進められない人間なので、オリキャラの中でも「役者」である晴夜せいやとシュンに演じてもらう形で新しい物語を考えていました。

 新しく小説を書きたいとかではなく、単純にいつもと違う話を考えたかった。


 ここで少し晴夜とシュンの説明を。

 晴夜は拙作『晴夜とゼロの近くて遠い恋物語』の主人公の一人です。超天才子役と言われる中学2年生で、とっても良い子。学校ではダサいメガネをかけています。

 シュンはプリ小説にて公開している『疾風ヒミツ調査団』のキーパーソンで、犯罪組織ゲイルの幹部です。人気子役で晴夜と仲が良い中学1年生の男の子。言葉選びが直球です。



 ある日――そう、授業中です。

 殺し屋の物語って面白そうだなぁと思い、晴夜に殺し屋の少年役をしてもらいました。

 冷静沈着な凄腕殺し屋。その素顔はクラスの陽キャ、おまけにポンコツです。

 ポンコツが頑張って冷静沈着な殺し屋を演じているというわけです笑

 普段は明るく優しく、まさに太陽のような存在。

 しかし夜は静かで冷たく、闇に紛れて命を狙います。


 シュンは殺し屋の幼馴染役。このキャラクターは殺し屋組織のスパイで、凄腕殺し屋が組織のヒミツをバラしていないか監視する役目を担っています。

 信頼している相手にもヒミツを貫き通せているのか、また「ヒミツなんてナシだよ。絶対なんでも話してね。幼馴染なんだから」という風なことを言われたときに、負けずにヒミツにし続けられるかを調べます。

 ヒミツにできていなかった場合はボスに報告。

 つまりは殺し屋の仲間であり敵である、要警戒人物です。


 殺し屋に何かアクシデントが欲しいと思ったので、惚れ薬を女の子に「口移しで」飲まされたという設定にしました。

 凄腕殺し屋が簡単に毒を盛られるわけがないと思いましたので。(詳しくはエッセイ第4話)

 それと敵に「惚れ薬を口移しで飲まされたでしょ」と言われたら動揺して隙ができ、ピンチに陥るという状況を作れるのではないかと思ったから。

 結局ナシになりましたけれど。


 ここまで考えたとき「これはちゃんと書いたほうが面白そうだ」と思ったので、優と響が出来上がりました。


 優の髪が長いのは、殺し屋のときに髪を結べるようにするためです。結ぶだけでかなり印象が変わりますから。

 それと晴夜がボブなので、殺し屋役を当てはめたときに自然とひとつ結びになりました。見た目がそのまま引き継がれた感じです。

 年齢設定も晴夜の年齢をそのまま引き継いで中学2年生です。

 剣道部なのは、先に殺し屋の設定があり武器が刀だったことから。エースというのは〝凄腕殺し屋〟と言われる人物なのだから強くないとおかしいだろうということで。


 響は最初、明るい子でした。シュンの性格と年齢が受け継がれています。元々殺し屋と普通の中学生とで二面性を持たせようとしていたのですが、それだと優と被ってしまうので、普段から落ち着いておりポーカーフェイス気味で優の前では素を見せる少年に変えました。

 そして優等生設定も追加。優がお勉強できないので、響は逆にしようと。でこぼこコンビです。


 惚れ薬を飲ませた女の子・楓は、本名を雫にしました。特に理由はありません。強いて言うなら、薬→液体→雫という連想ゲームですね。名字(夏絵手)は楓の当て字です。この子は想い人に惚れ薬を飲ませるくらいですから、多少頭がおかしい(抜けてる?)ほうがちょうどいいと思い、初っ端から「朱雀様を崇拝しております」と言ってもらいました。


 さて、ここからは主要人物の心情について。

 応援コメント等で「物語に没入してしまいました」とか、すごく物語に感情移入してくださる読者様がいらっしゃって、とっても嬉しくて幸せだと思っております。


 実は(という言い方であっているのかわかりませんが)、優たちの心の動きは自分の経験をもとに書いている部分が多かったです。


 こう言っては「は?」となるかもしれませんが、自分は優等生寄りの人間なので、響の気持ちは自分が感じたものが土台な気がします。


 例えば、最初のテストでクラスでトップレベルの成績をおさめました。先生に褒められ、親に褒められ、友だちにも褒められ……次のテストのプレッシャーになります。

 次のテストで順位を落としたら、知らないところで落胆されるのではないか、と思ったり。そんなことはないのでしょうけれど、ネガティブ思考の自分は不安に思いました。過ぎてしまえば「もういいや」ってなるんですけれどね……。


 こんな話よりも問題は響ですね。

 響は学年一の成績を維持する優等生。そのプレッシャーは自分の経験の比にならないはず。

 なので自分が感じた気持ちを何倍にも大きくして書きました。可哀想でした。

 優がいなかったら、響はきっと壊れてしまっていたことでしょう。


 次に雫の気持ち。

 学校が嫌だ、という気持ちも自分は経験済みです(みんなそうだろう)。友だち関係も。

 学校嫌だは置いといて、友だち関係はツライです。


 自分はお互いを一番の友だちだと言える子がいるので大丈夫でしたが、その子が他の子と話して自分は一人だったとき、その場にいることができなくなって逃げました。

 他にも友だちはいますが、その友だちにさらに仲の良い友だちがいると、2人の輪の中に入るのは邪魔者のような気がします。


 雫は転校生なので、ずっとこの調子です。

 みんなが良くしてくれても、内心では邪魔だと感じているのではないかと思ってしまいます。


 最後に優の暗い気持ち。

 あそこまでひどくありませんでしたが、一時期病んでいた(表現を間違っていたら申し訳ない)のを優に当てはめて、想像も交えながら書きました。

 優の場合は支えてくれる親兄弟がいないので、かなり苦しいのでないかと思います。

 友だちがそばにいてくれても疑心暗鬼になりそう。

 さすがに人殺しの気持ちはわからないので、そのあたりは完全な想像ですよ。



 裏話はこんな感じでしょうか。

 初めて10万字以上書いて完結させた作品なので、思い入れが強いです。

 これからも『この日々にさよならを。』のお話をすると思いますが、どうぞお付き合いください(_ _)

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【エッセイ】書きたいことをただカキカキするだけ ねこしぐれ @nekoshigure0718

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