第16話

毎日家でずーっとお父さんは




あの車が…あのバイクが…


って言ってていつも落ち着きがなくて外を眺めてる。


車やバイクの音がする度にソワソワするし

表情はいつも暗くて口を開けば被害妄想ばかり。





そんな日が続いたある日、、


お母さんがいきなり





「もう、やめて!」





泣きながら大声で叫んだ。






びっくりした。






こんなに大声を出すお母さんは初めてだった。





もう精神的に限界だったんだよね。




何を言っても何をしても少しも良くなることはなく悪くなる一方だったもんね。




私は学校に行ったり外に出る機会があったけど、お母さんはずっと毎日お父さんと一緒だったから…




お父さんは鬱の状態で仕事が出来ないから辞めていたし、お母さんはまだ体力が完全に戻ってないからもちろん仕事なんて出来ないしね。






私達じゃどうすることも出来ず...

おじいちゃんおばあちゃんに頼んで来てもらって嫌がるお父さんを連れて精神病院に無理やり入院させることになった。





こんなことしたくなかったけど、もうそうすること以外考えられなかった。



それほどにひどい被害妄想だった。




どんな言葉をかけても


「でも…」


と言って少しも聞く耳をもってくれなかったんだ。





お父さんはお父さんで誰にも理解してもらえずに毎日辛くて苦しかったのかもしれないけど、私達は私達で辛くて精神状態がおかしくなりそうだった。





心が落ち着くことがなかったんだ。





そして

しばらくの間は別々の生活。





お母さんとふたりきりの暮らしが始まった。







ーー今思うと、この時お母さんは少しずつ体調を崩していたんだと思う。




私のことを一番に考えてくれていたのかなって。ーー

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