割とぞわっとしたものを感じながら本作を読みました。
今でこそ自分は職にありつけておりますが、ブラック企業でパワハラを受けた後に失業、約一年間無職、という思い出すと憂鬱になるような過去があり、境遇を重ねてしまう部分があるのです。
今の仕事もさほど給与が高いわけでもないので、経済的に負担が大きすぎる「結婚」の二文字も不可能だな、とあきらめていますし、世間一般における「普通」というものと比べると、大分下振れた生活を送っている自任はあります。
今や「普通」と呼べる生活は「幸福」であり、中々成し得難い理想となっています。
そして、一歩間違えば誰もがその「普通」を簡単に失い、底辺での生活を余儀なくされるという、砂上の楼閣のような社会になっています。
毎日を幸せに何も不安なく幸せに生活するのって、いつからこんなに難しい事になったのでしょうか。
この作品は、そんな直視しづらい「底辺の現実」を見せてくれます。
目を逸らさずにご覧ください。
近頃多発している闇バイトのニュースに、
「この国にはどれだけ馬鹿がいるんだ」
と同情心の欠片もない感想を抱いていた人はいませんか?
――はい、私です。
でもこの短編を読むと、闇バイトに応募するところまで追い詰められる人間の気持ちが少しは分かるようになります。
悪人ではない、ただ真面目で気弱だっただけの一般人が、犯罪者の一歩手前まで追いつめられる――そんな社会の歪みが厳しく描き出されます。
「普通に生きること」すら難しい――というよりは、実質賃金が下がり続ける時代を生きる団塊ジュニア世代にとって、親世代を見て信じ込んだ「普通」の水準が高すぎるのかもしれません。
シビアな社会を突き付ける短編ですが、だからこそ、人の心の優しさに触れられる瞬間があります。