1 イケメン悪魔Vその名はコガ
「SSC」
一種の縛りプレイ。事前情報は一切見ない。ヒントになるかもしれないので
視聴者のコメントも見ない。遊ぶゲームは候補タイトルを適当に十作ほど集め
てルーレットで決める。
初見で目下休憩なしで、最速クリアを目指す。とはいえ都度トイレ休憩は取
るが、それも1分かそこらで戻ってきてまたゲームする。もちろんストーリー
パートやイベントムービーなど、飛ばせる場面はことごとく飛ばす。本筋に関
係ないミニイベント、おまけ要素は基本無視し、正規ルートだけを追ってい
く。
それを毎夜、生配信する。
正気の沙汰ではないかもしれないが、若さという武器でやっていた。
ゲームのボリュームによっては、途中離脱して後日つづきをすることもある
が、基本的には、一気にクリアまで配信する。スピード勝負。それがチャンネ
ルの誇りだ。
果たしてそれで真にゲームを楽しんでいると言えるのか?
もはやコガ本人にもわからない。
そんなことを繰り返しているうちに、腕がみるみる上がってきた。しゃべり
も一丁前に、できるようになってきた。三年に渡り夜な夜な、毎日のように生
配信でひとりしゃべりをしてきた成果である。
レベルアップで布の服からアーマーに着替えるように、体力や自信もついて
きた。
登録者も増え、無事に得た収益で動画まわりの設備をそろえることもでき
た。最新の高スペックパソコンを買えたし、黒衣に身を包んだ「悪魔ふう」の
Vチューバーの2Dアバターも、依頼して作ってもらった。
見た目十七歳イケメン悪魔Vのすがたが誕生すると、登録者はますます増え
た。
コガは大波に乗った気分で、アクスタや缶バッジなどのグッズ類も作って販
売した。
登録者は優に20万人を超え、順風満帆かに思えたコガだが、最近「ライバル
爆誕」というワードが耳に入ってくるようになった。
コガのゲームスタイルをそっくりそのまま真似して、最速クリアを目指す配
信者が次々と現れているらしい。
まあ、誰かに真似されることはべつにいい。配信者の企画など、パクりパク
られの応酬で成り立っている世界。コガのゲームプレイスタイルに著作権があ
るわけでもない。
模倣者が出てくるのは、自分の名前が広く認知されている証左でもある。逆
に得意な気持ちになった。
それに彼は、どんなライバルが登場しようとも、自分には敵わないだろうと
たかをくくっていた。だが――。
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