面白い

先進国で死刑を続けているのが日本だけな状況で、総理大臣Xがずっとレスバ(議論)してる。現実的でもあり虚構の良さもある、地に足をつけてたら届かないところにちょいと手を伸ばして「これはお話ですからね。さあさあ、お話を楽しんで」って言ってくれたような作品でした。

レスバって言い方は軽すぎるけど、yahooニュースとかXでよく見かけるような死刑の是非とか冤罪問題とか殺人犯の人格形成とかを理路整然と「自分の意見はこうだ」「それに対する自分の返答はこうだ」ってやり合ってるんですね。
その議論に真面目に付き合っていく読者(私)、議論は面白いな、これは議論を楽しむ作品で、レスバ好きの民が喜んで「その通り!」とか「異議あり!」とか「こういう問題について考えるのは大切だよ」とか言いながら楽しむエンタメなのかな、なんて思ったわけです。議論が本当に面白くて。

しかし、なんかそこで終わる作品ではなく、そこから総理大臣Xが「ヨーロッパにある、死刑廃止を訴える団体の重鎮」とドデカイ交換条件みたいなのを取りつけて「そっちがXXやめたらこっちもやめたるわ」みたいに約束しちゃった。
ここ読んでる読者(私)、「な、なんやて工藤」ってびびったところで、そこまでの議論で現実モードに頭が持っていかれてたからそこでふっと「これはそういえば創作話なんだよな」ってなり。
かつ、居合わせた人たちがざわっとしてくれて。その問題点も(全部じゃないけど)あーでもないこーでもないとリアクションして現実味を調整してくれつつ、「そういえば総理大臣Xはこんな人だって聞いたことあるよー」って呟くキャラで締めくくられたことで、「なるほど、世界平和?」と落ち着く場所をもらった気もして。
でも、「ここに座ったら安全、安心だよ。その解釈でいいんだよ」という0か100かみたいな落ち着くオチでもなく。

世の中って正解のわからない問題がいっぱいあって、倫理とか利害とかいろんな議論を交わしながら歴史が動いていくんだなあ、大きな流れの本当に一瞬のカケラみたいなのを見せてもらった気がするなあ……と思った読書体験でした。
初の女性総理なXさんは格好いいなと思いつつ、時世タイミング的に読み始める時ちょっとドキドキしましたw
面白かったです。

こういうの頭が疲れるけど、読んでて楽しいなって思うし、「ペンはなんとかより強し」みたいな感じがして好きです。
「昔の小説家さんとかが社会風刺とか当時の政治家の批判とかを作品に書いてるの読んだことあったな……」って思い出したりした。