第29話~書庫とノエル~
ふぅ……
今日は学校が休みだったから、あの書庫に来ていた。
そこでノエルの情報が欲しかったから。
そして鍵で書庫を開け、中に入った。
本の背表紙を流し読みする。
そこで20分くらい同じことをしていたら見つけた。
「あ……」
『殺し屋、ノエル情報集』
そのまんまの題名だった。
それをその場に座り込んで読み始めた。
俺は読み進めてくうちに、ちゆのページを見つけた。
そのページを読んで俺は急いで本をもとの場所に戻した。
ノエルの場所が分かったから。だけど、それは悲しい意味もあった。
書庫をでて鍵を閉めた。
そして、振り向くと、師匠が立っていた。
「師匠……」
「桐流くん、ノエルを殺しに行くの?」
「……」
「殺しに行くのはいいよ。ただし、それが正しいのかはよく考えてね」
「っつ……師匠……それを言うのはずるいよ……」
「僕は……そういうつもりじゃ……」
じゃあ……じゃあ……なんで
「じゃあ、なんで、なんでっ!教えてくれなかったんだよ!師匠……じゃなくて、ノエルっ!」
「……桐流くん……気づいちゃったか……」
師匠は笑顔ではにかんだ。その顔にはいろんな感情が混じっていた
「なんで、師匠は……」
「桐流くんと一緒。中学3年生の時に好きだった親友を殺されたんだ」
え……?
「その親友を殺したのは指名手配をされていた殺人犯だったんだ。そして僕は、桐流くんと同じよう に、突っ走っていったんだ。そこに殺し屋がいて異能を買われたんだ。そして任務をまかされた」
「任務……?」
「そう。それは暗殺者になって五大幹部になって情報を引き出せっていう任務」
「…………」
「だから僕がノエルだよ。ほら、殺して。桐流くん」
いやだ……いやだ
「……嫌……いや、いやだ」
「なんでよ。僕がちゆちゃんを殺したんだよ。殺していいよ。」
「……それでもっ!俺は知ってる!まだちゆは死んでない!」
「……っなんでそれを……」
「本に書いてあった!ちゆは、東雲のもとで保護って書いてあった!だから、ちゆは死んでない、だから、師匠は悪くない!」
「ははっ。桐流くん。人生は一回きりなんだよ。死んでも泣いても、愛しても、殺しても。だから好きなことをすればいい。だから僕のこと殺して?」
好きなことをしていい?
「師匠。好きなことして良いんですよね?」
「うん」
「なら俺は師匠を許します。そして殺し屋を辞めてください。そして、俺の師匠を続けてください。」
「え……?」
「俺は、ノエルは嫌いだけど、師匠は好きだから!これからもよろしくお願いします!師匠!」
「……ふへっ。桐流くんは優しいね」
「ん……?」
「ううん。よろしくね、桐流くん」
「はいっ!師匠!」
これからも、俺にいろいろ、教えてください。
俺はまだ若くて、何も経験もないから。
これからも、これからも。ずっと、よろしくお願いします。俺の大好きな師匠っ!
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天才暗殺者 千草ゆき @yoitukiyoto
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