第79話

「ナースコールで先生を呼びますね。ーーー809号室の仲村譲さんが…」


「譲ってやめて…看護婦さん…ジョーって、カタカナで……うわ、吐きそう……」


「仲村君!しっかり!」




そんなわけで、仲村譲は、左腕骨折とストレス性の胃腸炎で入院して来た。6人部屋の窓際の俺と廊下側のジョーという男。





「え?俺腕にボルト入れるんですか?」




意識しなくても、会話は聞こえてきた。




「心配しなくて良いよ。骨がくっつくのをスムーズにするためにするから」


「腕にボルトとか、かっこいいー……、好きな形とかカスタムして良いですか?」




……すげぇ馬鹿って事は直ぐに分かった。






鼓膜の事が心配で、なんとなく気分が上がらず最初の3日間は窓の外を見ながら過ごした。カーテンも閉めて塞ぎ込みがちだった。





レオは大丈夫だろうか。聖夜や、ハルやカイやS.R.Cは……。


俺はあの日携帯をなくしてしまった。


アイツらの連絡先を知る術は、入院中の俺には無かった。





「おっす。ボルト見せろよボルト!」




数日経つ頃には、仲村譲は他の病室に友人が出来たらしく、


そいつが、よく病室を尋ねるようになっていた。




ソイツは仲村譲にはハクと呼ばれていた。隣の病室に入院しているらしいソイツは、病室の表札に


白木トモ


と書かれているのを見かけた。




白木だから、白でハクなのか。


へぇ。




自販でも行こうぜと2人がいなくなると、俺は気分転換に喫煙所に向かった。

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