第72話
「……お前の兄貴が持ってきた」
真横まで歩み寄ってきたレオが、俺に渡したのは、俺のギターだった。
「弾けるかよ。片腕で」
「歌は歌えるだろ」
ーーー解放感があって、明るくて温かくて、幸せなんだよーーー
ーーー天使の歌声なんだよ、人を幸せに出来る声だよーーー
「……歌えねぇよ……」
天使のようになんて歌えない。
もう、あんな自由には歌えない。
だってそれは罪深い。
何一つ救えなかった俺には、
幸せを、自由をーーー語る資格なんて……無い。
「俺は背負う」
そう言ったレオの胸には、俺があの日見た聖夜の胸についていた
ターコイズのネックレスがあった。
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