第69話

空はなんて広いんだ。





「………………」





病院の屋上という物は、いくら日当たりが良くても、辛気臭い雰囲気がある。







俺の右腕はバキバキに折られていて、骨がくっつくまでは凄く時間が掛かるようだった。



あばらや脚や指なんかにもヒビが入っていて、くしゃみをいかに小さくするかが俺の課題になった。



頭に巻かれた包帯は、いつまでも取ってもらえなくて、鬱陶しかった。




頭を殴られ脳震盪で倒れた俺。





脳の検査に異常は見られなくて、


一時退院して車椅子で私立の受験に行った俺は勇者だと思う。



リサコが、息子はひき逃げに合いましたと言い聞かせたおかげで、不幸な少年枠でなんとか聖高校には合格できた。









あの事件の時、重症を負ったのは俺の他にも沢山いたらしい。





「ハル」





ベンチに座っていた俺は、その声に振り返った。




「よー。カイ」




カイもこの病院に運び込まれていた。




こめかみが切れて血が止まらなかったらしい。一時はかなり出血していてやばかったらしいけど、どうにか持ちこたえて目を覚ますと、さっさと退院した。





「どーだ、調子は?」


「最高だよ」




そういって苦笑した俺は、このザマだと自分の体を見下ろしてカイを一瞥した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る