第53話

放課後のファミレス。



1人で考え事をしていたはずの俺の正面には、カイが頬杖をついて座っていた。



「残念だけど考えてる事全部言葉になってるぞ。で、俺の考えは、話をするならinfinity'sのルーキーよりもS.R.Cの橋戸巧の方が良いと思う」


「え、なんで?」


「infinity'sのレオとかいう奴は手に追えそうにない。寡黙な奴らしいし。まだ橋戸巧の方が話を聞いてくれそうだ」


「そうと決まれば…、でもカイ、マジで良いのかよ?」


「何が」




煙草に火をつけたカイが、窓の外に視線を移した。





「今俺と一歩踏み込めば、やべー事に巻き込まれる事になるぞ」


「さぁな。俺はお前の平和主義に付き合ってやるだけさ」





立ち上がろうとした俺たちを引き止めたのは、俺の携帯の着信音だった。



「はい。…あ、聖夜?」


『おー久しぶり!聞いてくれ、俺らエルフが、なんとデビューが決まった!!今度CYBER BOXXでデビュー祝いのイベやるからさ、お前らBlessも出演してくれよ!』


「マジ!?聖夜すげー!おめでとう!でもさぁ?カイがドラムやるって言ってくんねぇからさ、Blessは事実上でしか存在してねぇんだよ」


『ぎゃはは!まだ口説き終わって無かったのか!』


「そーなんだよ。聖夜からもカイに言ってやってよ?」


『俺もそうしてやりたいんだけどさ、すげー忙しいし、最近何やら物騒でなぁ、あ、休憩終わる。今仕事中なんだ、ライブの詳しい事はメールするから!じゃな』


「あ、…切りやがった」




色々物騒って。アローズもなんかあるのかな。


…あそこは幹部もしっかりしてるし、揉め事も数年はしていない筈だけど。


聖夜の事嫌いな奴なんて聞いた事ねぇし。





「聖夜か?」


「デビュー、とうとう決まったらしい」


「ほー。とうとうか」

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