第41話

「遠慮しとくって、俺言ったよな?」



数日後。


CYBER BOXXの前で、俺を見下ろすカイ。




「いや、だって暇だろ?お前」


「忙しいっつーの…」


「だって今日もカフェでゴエザ読んでたし」


「ゲーテだ!」





そんなこんなでカイを引きずってCYBER BOXXの中に入ると、既に沢山の人が場内にいた。



殆どチーマーやその彼女みたいだけど。



「うぇーい!ハル!」


「おぅ!カイ連れて来た!」


「うぇい!カイ!元気だったか、久しぶり!」


「あ、あぁ」



気の良いBlessのメンツに、カイもつっけんどんな態度を取る事は出来ないようだった。




「……久しぶり、」





ほら。カイも少しずつ心を開いてくれてると思わないか?



Blessのメンツに話しかけられて、柔らかい表情で受け答えしているカイをみているのは、なんだか新鮮というか、ほっこりするというか。




良かった。俺が良いなって思ったカイをBlessの皆が良いなって思ってくれたみたいだ。


カイもきっと俺たちBlessを好きになってくれるって信じてる。




「あぁっ!聖夜!」


「聖夜ぁ!」



その時黄色い声援がすぐ側から聞こえてきた。




「あ、聖夜!!」




俺の声に、ゾロゾロと歩いていたエルフのメンツが振り返る。




「おーハルカじゃん!Blessのメンツも!見に来てくれたのか!お前らライブハウス来るの久しぶりじゃねーか!」




最後尾にいたのは、チーマーの中で名を馳せるアローズのヘッドの長谷川聖夜。強くて優しい男の中の男だ。


女からもモてるけど、同性からの人望も熱い。(まぁ、聖夜にはサラっつぅ可愛い彼女がいるんだけど…)




「うちのドラマーがDJになりまして、スカウト活動に専念してたんだよ」


「ぎゃはは!何だそりゃ!…お、そんで、見つかったんだな!新しいドラマー。よかったな?」



きっと色んな人に話しかけられて忙しいのに、聖夜は誰にでも平等で対等で優しい。




「今口説いてる最中なんだよ。コイツは櫻井快晴だよ、聖夜」


「よろしく、カイセイ。俺はエルフの聖夜。アローズのヘッドやってる。今日は見に来てくれてありがとうな?」


「……はじめまして。宜しくお願いします」



ぺこりと頭を下げるカイを、俺もBlessのメンツも微笑ましく見守った。

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