第3話

「一哉、薬はちゃんと飲んだの?」

 母親が心配そうに息子を見た。

「大丈夫。ちゃんと飲んだから」

 一哉は部屋に入ると、渡されたラブレターを読んだ。


 ……ずっと見てました。

 あなたが好きです。


 ずっと見てたって?

 俺の何を?

 一哉の口から思わず小さな笑いが溢れた。

 一哉はケースからバイオリンを取り出した。

 そして椅子に座ると、バイオリンを構えて弾き始めた。

 大好きなタイスの瞑想曲である。

 一哉は7歳からバイオリンを習い始めた。

 病院に入院していた時にも、調子のいい時は弾いていた。

 バイオリンを弾くと、他の子供達や看護師さんまで集まってくるので、一哉はそれがとても嬉しかった。


 後は出来ないけれど、バスケを見るのが好きだった。

 テレビでバスケの試合を見るのが大好きで、興奮するので看護師さんに見るのを禁止されたぐらいである。

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