青空の下ー襷番外編ー

水島あおい

第1章 転向

第1話

その笑顔はまるで冬の青空のように清々しく澄み切っていた……

宮本歩希(ほまれ)はその笑顔に釘付けになっ

た。

そしてその時から小峰達也は歩希の心にしっかりと入り込んでいた。


1月2日と3日は箱根駅伝がある。

歩希はテレビでその様子を見ていた。

明和大学は1区の沢谷から2区の小峰達也に襷が繋がった。

小峰達也は明和大のエースで4年生である。

1年生の時から花の2区を走り続けて来た。

その走りを見た瞬間、歩希の息が止まった。

何だ、この走りは……!

他の選手とまるで違う。

一歩一歩地面につく足が軽い!

そのフォーム、走り、前を真っ直ぐに向く真剣な眼差しはエースでキャプテンとしての誇りに満ち溢れていた。

胸が熱い。

「頑張れ!小峰さん!」

熱くて思わず声を上げて応援した。

1区から6位で襷を受けた小峰は次々に選手達を抜き、とうとうトップに立った。

給水の時に仲間に見せた笑顔にも釘付けになった。

苦しさは全く見せずに平然と23.1kmを走り抜いた。

3区の高橋に襷を繋いだ時に見せた笑顔は冬の青空のように澄み切っていた。そして高橋の背中をポンと叩いた。

歩希は小峰達也が戸塚中継所の奥に入って行くまで目が離せなかった。


中学2年の冬の事だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る