第7話「また2倍に……」
今回は、ほうじ茶に一口サイズの煎餅と豆大福が用意されていた。
バリバリと煎餅を頬張りながら、ふみは神の話を聞いていた。
「いやぁ、本っ当にありがとうございました。こちらの不手際にも関わらず、降りかかる様々な災難や事件を前向きに。且つ華麗奔放に解決する姿は見もので…」
「見世物じゃないんですけど?」
「…………はい…スミマセン………」
シエルの一言に神は口を噤む。
しょんぼりとした神を気にすることなく話を進める。
「で?本題は?」
「はい。貴女様の望みを聞きに馳せ参じました」
シエルの頭に『?』が浮かぶ。
望みはもう叶えてもらったはずだ。
懐疑的に思いながらも、6年も前の記憶を掘り起こす。
煎餅が無くなり、13個ほどあった豆大福が残り5個になったところでふみは自身の発言をなんとなく思い出した。
(そういえば、終わったらまた聞いてもらうって言ったっけな)
温かいほうじ茶を啜りながら、今欲しいものを考えてみる。
移住先は決まっている。
やんごとなき身分になりたいとは思わない。
魔法は殆ど習得しているし、魔力も掃いて捨てるほどある。
(―――じゃあ、移住後にしたいのは…)
「あ、 "想像したものがなんでも手に入るようになる"、 とか」
「そういった機能のある神具とかですか?それで宜しければ、今、創ってお渡ししますが」
「え、いいの?」
「はい。ただ、聖女たちにバレますね」
神曰く、聖女・聖人として認められる者は神の力の波動を感じ取る能力を持っているらしい。勿論、神具から感じ取ることもできる。
感知する能力の精度にもよるが、ふみが持っていることは確実にバレるだろう、とのこと。
「現大聖女と、先日、星河様が保護されたダークエルフの少女は感知するでしょうね」
「へぇ……………えっ?」
「? 星河様は分かっていて保護されたのでは………?」
初耳。
新情報。
驚きの事実。
困惑状態である。
ふみは取り敢えず、何事もないように微笑んでおいた。
「あぁ、ほら。やっぱり分かっていらしたじゃないですか」
ふみの心情を知ってか知らずか。
(習ってよかった、貴族の微笑み)
そして何事もなかったように話題をすげ替える。
「じゃあ、神具がダメなら魔法はどうです?無いんですか、創造魔法的な」
「創造魔法……あっ!ありますよ!創造魔法!古代の賢者が発明してそのまま放置されていたのが!魔力が足りず誰一人として扱えないままの魔法ですが!」
「それ…大丈夫ですか……?」
神の言葉に若干不安になるが、それ以外に解決方法も無いため、ありがたくその創造魔法についての研究書を受け取る。
「他に何か御座いますか?」
「え、いや~…。これさえあれば十分なんですけども…」
「では、そろそろおいとましますね」
泡沫となって世界が散っていく。
「また、お願いしますね」
ふみの置き土産に、神は非常にわかりやすく顔を引き攣らせた。
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