第38話 失意悄然
その夜は、いろいろなことが頭の中をぐるぐるして、なかなか眠りにつけなかった。
ようやく眠りについたところで、何やらそばに人の気配を感じ、目を覚ました。
なんと、俺のベッドの中に、全裸の冴島さんがいた!
「ちょっ、ちょっと、何やってるの、冴島さん」
「翔太様、この度は大変なことになってしまって… お気持ち、お察しいたします。せめて、私のこの身体で翔太様をお慰めさせてください」
そういって冴島さんは私を抱きしめた。柔らかな胸が俺の胸に押し当てられ、早速俺の身体は反応を始めた。
「翔太様には、いろいろと失礼なことをして本当にごめんなさい。言い訳になりますけど、全て仕事、任務としてやむなくやったことなんです」
「それは、仕方ないと思うし、別に怒っていませんよ」
「これで私の翔太様に対するミッションはすべて終了しました。今夜は仕事抜きで抱いてくださいね」
冴島さんの手が俺のパジャマの中に侵入し、すでに硬くなった俺の敏感な部分をピンポイントで刺激した。身体に快感が走り、俺の理性はどこぞへすっ飛んだ。
もう俺に彼女を拒否するすべは残っていなかった。俺は自ら服を脱ぐと、冴島さんに突入した。
冴島さんは俺をするりと受け入れ、自らも積極的に反応した。
「ああ、翔太様、すごい、もっと、もっとよ」
めくるめくひと時が終わると、冴島さんは態度は豹変させた。
「本当に翔太様は女性にはとことんわきが甘いですね」
彼女は、天井の監視カメラを指さしながら言った。
「行為の一部始終は録画させていただきました」
スマホで録画した映像を確認しながら、彼女は言った
「姫様たちに、翔太様は私とも愛人関係にあったと伝えたら、今は翔太様にご執心の姫様たちも、少しは目が覚めるかな。どうです、翔太様、そう伝えてもよろしいですか」
それにしても、ここまでやるか冴島さん、あんた何者?
「私は内閣諜報部より王室庁に出向中の、いわゆる秘密諜報員とご理解ください。これでも身を引いていただけないというなら、もっと過激な手を使うことになりますよ」
ここまでするほど、おれは邪魔な存在なのか。瓜生さんには反発した俺だが、ここで俺の気持ちがぽっきりと折れた。
俺は、黙って身を引くことを承諾した。
翌朝、軟禁を解かれて職員寮の自室に戻ると、部屋はもうもぬけの殻だった。
俺が以前住んでいたアパートの部屋を再契約したとのことで、荷物はそこに送るよう手配済みとのことだった。
こうして俺は元の生活に戻った。半年間の幸せな日々が、まるで夢だったように。
王位継承や王室に関するニュースは折に触れてTV等で目にした。当たり前だが、そこに俺という存在があった形跡は、全くなかった。
楽しかった姫様たちとの日々を思い出さない日はなかった。しばらくの間は、抜け殻状態で何もする気が起きなかった。
「これではいけない」
無為な数か月を過ごした後、ようやく俺は気持ちを切り替えた。
といって、このまま大和国にいては、嫌でも王位継承に関するニュースや姫様たちの動向が耳に入ってくる。それは俺にとって辛いことだった。
王室庁からは、口止め料としていくばくかのお金をいただいた。これを元手に、俺は米国留学をすることにした。
もうこの国には帰ってこない、米国で法律を勉強し、かの地で弁護士になる、そう固く心に誓った。
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