第19話 失意騒然
その翌日、彼女は伸ばしていた髪をばっさり切って、ベリーショートにした。
不始末をしでかしたので体育会風に坊主になったのか、それとも出家して尼さんになったつもりなのか。
それでも「ローマの休日」のオードリー・ヘップバーンみたいで、皮肉なことにとっても似合っている。
そして、二人にとって、長い、じりじりした二週間が経過した。
案の定というか、やはり彼女に生理は来なかった。
彼女の周期は安定していて、今まで遅れたことは、ほとんどないそうだ。俺たちは意を決して、前後策を相談するために、冴島さんの部屋のチャイムを鳴らした。
「まず、事実確認をしましょう」
俺の状況説明を聞いた冴島さんは、冷静かつ事務的にそう言うと、薬箱からスティック状のものを取り出し、雅姫に渡した。
「妊娠検査薬です。姫様、お手洗いでそれに尿をかけてきていただけますか」
何でも用意してるんだな、この人。
トイレから出て来た雅姫が検査薬をおそるおそる冴島さんに差し出した。
検査薬を見つめ待つことしばし、冴島さんは陽性の反応を示した検査薬を二人に見せると、恭しく頭を下げた。
「翔太様、雅姫様、ご懐妊おめでとうございます」
「これから忙しくなりますね。陛下を始め関係者には私から連絡を入れておきます」
冴島さんの言葉を呆然自失の状態で聞き、俺たちは彼女の部屋を退出した。
俺は青ざめる雅姫を抱えて俺の部屋に戻り、二人でベッドに寝転んだ。
「雅姫、結婚しましょう。二人で、いや三人で、幸せになりましょう」
しばしの沈黙の後、彼女が言葉を絞り出す。
「翔太くんと結婚できるのも、翔太くんの子どもを産めるのも、嫌じゃない。むしろうれしいと思っているよ。でも、もう少し考えさせて」
「どうして?」
「こんな卑怯な手を使って、無理やり妊娠して、葵姫や星姫だってきっと翔太くんのこと好きなのに、私、申し訳なくて、とても素直に喜べないよ」
「それに、この子は、翔太くんと私が愛し合ってできた子どもじゃない。私が翔太くんをレイプしてできた子どもなんだよ。そんなんで、これから先、いい家族になれるなんてとても思えないよ」
と言ったところで、なにせ俺は種馬としてここにいるのだ。早速期待通りの成果を上げたことになる。現実問題として産む以外の選択肢なんてない。周囲が絶対許さない。ここはなんとしても彼女にプロポーズを受けてもらわなければならない。
でも、きっと、彼女は躊躇うだろう。そう思ったから、俺はベッドの上でプロポーズしたのだ。
俺は無言で彼女のシャツのボタンを一つ一つ外していった。
「あ、だめよ! 何してるのよ! こんな大事な時に!」
俺は彼女の言葉を無視し、黙々と作業を続けた。
彼女が頭で拒否をするのなら、俺は彼女の身体にYESと言わせてやる。
俺は、彼女の服をはぎ取ると、むき出しになった身体の肌に、指と口で愛撫を加えていった。
彼女の抗議が止み、やがて生まれたままの姿に剥かれた彼女の、身体の準備が十分にできているのを確認すると、自分も服を脱ぎ捨てた。
彼女と繋がりながら、俺は彼女の耳元に唇を寄せて囁いた。
「姫様、俺と結婚して、俺の子ども、産んでください」
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