第8話 星≪あかり≫姫独白

 とある筋から、他の姫君に先んじて、王位継承者候補の個人情報を入手した。

 私はすかさず先手を打った。

 運よく同じ目白台大学の友人の中に綾小路翔太さんの友人のガールフレンドがいて、彼女を通じて合コンに誘うことができた。


 大学の近くのホテルのスイートルームを予約し、部屋に翔太さんたちを招くことにした。これなら人目を気にしなくともすむし、気に入ったらすぐさまベッドに誘いこむことができる。

 

 もちろん自分の素性を明かすことはしない。ハーフフェイスのマスクを纏い、名前も「織姫」と名乗った。他の女性も私に倣って、今夜はマスカレード・パーティだ。

 

 それでも私は一応有名人だ。盛り上がる五人をしり目に、正体に気づかれぬよう、慎重に、それとなく彼を観察し続けた。

 

 長身でイケメン、外見は申し分ない。気さくで、明るくて、女性との接し方もそつがない。これは「合格」と確認できたところで、私はそっと彼に近づき、ベッドルームに誘った。


 女性経験もそれなりにあるのだろう。純朴そうでいて私の突然の誘惑にも狼狽≪うろた≫えることがない。

 照明を落とし、マスクを外してキスを交わした。自然な流れで、私たちは場所をベッドに移し、互いの服を脱がせ合い、生まれたままの姿で抱き合った。


 ベッドの中の彼は、五本の指ほどの私の男性経験の中でも断トツに素敵だった。

 私は、彼が王位継承者であることも忘れ、彼との行為に夢中になった。


 深い考えがあって彼を誘惑してみたわけでもない。強いて言えば好奇心と反骨心から、だろうか。

 私は国王の弟の次女、順当にいけば彼と結婚するのは国王の一人娘である葵姫だ。

そうなる前に、彼がどれほどのものか、一応試しておいても損はない、そんな程度の気持ちだった。

 

 それが、抱かれてみれば大当たりだ。

 私とて王族の姫、彼のパートナーとなる資格はある。これほどの上玉が、しかも王位継承者が、誰かのものになってしまうのをを黙ってみている手はない。

 

 現時点では私が一歩リードしているが、国王は一人娘の葵姫押しで強引に動いてくるだろうし、雅姉さまの動向も侮れないところだ。私も余裕などかましている暇はない。

 

 彼と相思相愛、恋人同士になれればそれはそれでうれしいけど、そして婚約とか、そういうことになればもっと嬉しいけど、所詮は私は国王の弟の次女、一回くらい関係を持ったところで、最初から本命というわけにはいくまい。


 まずは他の姫君に先んじて彼のセフレになって、葵姫や雅姉さまと彼がそういう関係にならないよう彼のそばでけん制を続け、ついでに彼との極上のエッチも思う存分楽しんじゃおう。


 さすがにいきなりの青姦は拒否られたが、とにかくその場の勢いでセフレになることを認めさせた。

 彼も突然環境が変わっていろいろ思案をしていることだろが、ここはひとつ、考える暇を与えずに畳みかけてしまおう。

 

 早速今夜彼の部屋に押しかけ、もし彼が躊躇っているようだったら、こっちから裸になって彼をベッドに押し倒してしまおう。


 そう決心すると、私の脳裏に、彼とのあの身体が燃え滾≪もえたぎ≫るような一夜が、まざまざと蘇って来た。

 ああ、あの月≪るな≫くんに、今夜また抱かれるのだ。そう思っただけで私の身体の芯が濡れてくる。


「よーし、今夜は、思いっきりかわいがってもらうぞー」


 思わず立ち上がって大きな声を出してしまう星姫であった。






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