王都到着と学園の威圧感






**王都——**


かつて「未来」を夢見た場所。

だが、同時に「失ったすべて」の象徴でもあった。


長く続く石畳の道。喧騒に満ちた人々の声。遠くにそびえる白い尖塔。

その光景はあまりに馴染み深く、胸に刻み込まれたはずなのに──

なぜか今は、初めて目にするもののように感じられて、違和感が胸の奥でひそやかに疼いた。


「……変わってないな」


呟いた声は、喧騒の波にさらわれ、誰にも届かない。


だが、胸の奥は静かにざわめき、鋭くちくりと痛む。


この街並みを、また見ることになるなんて──

それは、喜びではなく、むしろ静かな戒めのように、心を締めつける。


過去の傷がよみがえり、気づけば剣の柄に手を伸ばしていた。

指先に伝わる冷たくも頼もしい感触が、わずかな安心をもたらす。


目の前には、威風堂々たる王立武術学園の門。

高くそびえ立つ石造りの壁に、剣と盾が交差した紋章が厳かに輝く。

貴族と軍人の名誉、そして伝統が息づく場所。


その重厚な存在感に圧倒され、思わず足が止まる。

ここはかつて、自分を拒み、嘲笑い、挫折を叩きつけた場所だ。


「……この門の向こうに、また“何か”が待ってるんだろうな」


弱く漏れた本音に、冷たい風だけが応える。


でも、もうあの頃の少年ではない。

失った命、壊れた絆、何度も死の淵をさまよい、ようやく掴んだ“今”がある。


胸の奥で、小さな炎が静かに燃えていた。

失敗を繰り返した過去も、裏切りに傷ついた心も、すべてが今の自分を形作っているのだと実感する。


深く息を吸い込み、震える足に力を込める。


そう、今度こそ、この嘲笑の門を越えてみせる。


自分の剣と心を信じて、未来を掴むために──。

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