ひび割れ
夢斗
ひび割れ
また どこかで
小さく声が響いている気がする
何も訊いていないのに
なぜか 答えだけが先に突きつけられる
「きっと 無理だよ」
「また あの時の二の舞いだよ」
耳じゃなくて
どこか深い洞窟の奥のような場所で
こだまする声
名前も 顔も知らないはずなのに
言葉は正しくて
反論できなくて
それが深く 胸に刺さる
鏡の前に立つたび
必ず なにか一言 言われている気がする
服を選んでも
姿勢を正しても
思い出せるような うれしい声はない
ほめられたはずの景色も 記憶に見つからない
まるで
足もとから 自分が粉になって
誰かの目の前で こぼれていくようで
ここにいるはずなのに
いつも どこか遠くから
見えないひびを探しては 嘲笑っている
呼んでいないのに
相談なんて していないのに
すでに この日を
見限られていた気がする
誰よりも 近くて
誰よりも 遠い
それなのに
誰よりも よく知っていて
誰よりも 信じてくれない
やさしくされたいのに
耳を澄ますと
そこには 冷たい声だけが 響いている
ひび割れ 夢斗 @yururu1221
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