第9話真実を知るのはフラグだね(ナニとは言わない)

正午のクラス・

私は今、クラスの隅で馬飼君やアズマさんと一緒にお昼ご飯を食べている。


アズマさんは景品で手に入れたスナック菓子を砕いて弁当にかけている。

とてもおいしそうだ。


馬飼君は菓子パンをいくつもほおばっている。


二人で食べる昼ご飯はおいしい。



昼ご飯の時間が終わり、私はクラスのシフトに入る前に午前中も働いていた火鳥や他の人たちに仕事の内容について教えを乞う。


とりあえず男子は厨房でレシピ通りに菓子類を作ればいいらしい(たまにいる、メイドさんたちに直接作ってもらうとかいう注文をしてくる客を除けば)


始めは侮っていたが予想以上に激務だった。

「渡、チョコチップクッキー3つ」

「室隅さん五番テーブルに紅茶セットお願いしまぁ~す」

「室隅君このメニューはたくさん注文されるからまとめて作った方が効率いいよ」

そうして繁忙期のようなものを超えると厨房にはしばしの余裕ができる。


そこには私のほかにも三人ほどの男子がいて話していた。

その中のやや体格の大きい眼鏡の子がこちらを向くとおそるおそるといった調子で私にこんなことを聞いてきた。


「ねぇ室隅君は黒金さんと火鳥さんどっち派?」

「え?」私が困惑していると

すると天パの子が「あ、それ俺も聞きたい」と言ってきた。

「どっち派っていうのは?」私は質問する。

「だから黒金さんと火鳥さんのどっちが好きかってことだよ」体格の大きい子が答える。

「文科系の黒金さんか、それとも体育会系の火鳥さんか。どっちってことだよ」ロン毛の子も補足説明を入れてきた。

「え、えぇ~?」そんなこといきなり言われても困る。

今までそんなこと考えたこともなかったから。

なかなか答えを出せずにいると彼らは「気持ちはわかるぞ。悩むもんな」と勝手に自己完結なっとくしてくれた。


これでこの話は終わりかとも思ったが今度は天パの男子が「そう言えば室隅君って火鳥さんにいつも『わたる』って呼ばれてるけどどういう関係なの?」と聞いてきた。

隠すことでもないと思い本当のことを打ち明ける。


つまり私と楓が幼なじみであることを、


私の話を最後まで聞いた彼らは「「「あぁ~」」」と何かに納得したような声を出した。

どうかしたのかと聞いたらロン毛の子が「いや、火鳥さんが他の男子と比べて君だけは何か心を許している感じがしてて『なんでだろうね?』って皆で話してたんだけどそれの答えがようやくわかったからさ」

「そうかな?いつもはあんまり話さないけど」

「その時点で特別だよ。他の男子だったら直接の用がなければ会話すら出来ないもん」

そうなんだ。それは少しうれしいがでも少し複雑でもある。


そう考えていると天パの子が「ねぇ。幼なじみって本当に火鳥さんだけ?もう一人いなかった?」と聞いてきた。


「え?どうして?」

「いや、なんとなくそんな気がしてさ。思い出してみて、本当に幼いころに遊んだのは火鳥さんだけだった?」

天パの子はまるで既に答えを知っていてそれを私と確認するような聞き方をしてきた。

何なんだ一体?そう思いながらも自分でも少し気になったから思い出してみる。

確かに楓だけだと説明ができない思い出がいくつも思い浮かんだ。


お店屋さんごっこは本当に二人だけで遊んだのか?

だるまさんが転んだは二人だけで遊べるもなのか?

あの砂場の山は子供二人で作ったにしては大きすぎないか?


考えれば考えるほどに謎は深まっていく。


ーーそうだ、あの子だ、あの白い髪女の子


あの子がいたんだ。

確か家が遠いとかで同じ小学校には通えなかった女の子が一人いた。

そう考えていると後ろから楓が「おーい、渡ぅ。こっち手が足りないからちょっとこっちにヘルプに来てくれる?」と言ってやってきた。

そこで思いきって楓に聞いてみることにした。


「なぁ楓。ちょっと話したいことがあるんだけど」

「な、なんだよ急に、そんなに改まって(え、今楓って言った?言ったよね?久しぶりに?このタイミングで?話?これはもしかして、そういうこと?ってことは。しゃあああああ。黒金ぇてめぇのまけだぁぁぁ)」

「ん?何か言った?」

「い、いや何も(さぁ来い!・・・それにしても長かったなぁ。大体12年ぐらいか?まぁいいさこれからの二人で歩む人生の方が長いんだからなぁ!)」

「あ、あのさ」

「うん(なんだ?妙にもったいぶるな。もしかして告白しても断られるとか考えてるのか?そんなことはないぞぉ。二へ二へ。私はたとえお前がどんなに変な告白をしてきてもちゃぁんと受け止めてやるからな。ニマニマ。だから焦らさずに早く来い!)」


「子供の時一緒に遊んだ髪の白い髪の女の子っていたよね?その子について覚えてる?」


「は?(お、おい渡。そいつは何の冗談だ?何で他の女の話が出てくるんだよ!!!しかもよりにもよってあの女のことかよ。くそ!忘れてたと思ったのに誰の仕業・・・テメエラカ?)」

そういって楓はどこかを憎々しげに睨む。

「?どうかしたの楓?」

「い、いやぁでかい虫がいてさぁ(オマエラノことだぞ)?それで何だっけ?白い髪の女の子だっけ?」

「え!虫って、ここ厨房だよ。大事件じゃん。どこ?」

「いや、もう消えたからさ。それで?何を聞きたいって?」

楓の声はどこか怒っているように感じた。

「あぁ、白い髪の女の子だよ。よく一緒に遊んだよね?それについて何か覚えてないかと思ってさ」

「いやぁいなかったんじゃないかなぁ。そもそも一緒に遊んでたのに今まで忘れてたんだろ?そんなことあるのか?子供の時の記憶だしもしかしたら別の記憶と間違えてるのかもよ?」

「そうかな?」

「きっとそうだよ(いらない記憶思い返させやがって)。それより早く店の前行って客の整理とかしてよ。手が足りなくて大変なんだから」

そう言って私は楓に手を引かれ店の前に引っ張って行かれた。




「火鳥さんなんか怒ってたよね?」厨房で天パの少年高円寺こうえんじ太郎丸 たろうまるがつい先ほどのことを思い出しながら震える声で言う。

それに対してロン毛の少年堂島どうじま山門 やまとはうなづきながら「でもこれで黒金さんの謎も解けたよね」と賛成の意を示した。

その言葉に体格の大きい少年大河内おおこうち羅生門らしょうもんは「あぁ、がな」

そして三人は口をそろえて言う「「「室隅君の言っていた『白い髪の女の子』は『黒金』さんで二人は幼なじみ。そして二人とも『室隅君のことが好き』それに(女性陣は)お互い気づいている」」」


この結論に大河内は「道理で二人に告白した奴らは決まって即答で断られているわけである。初めっから答えは決まっているのであるからな」と納得した。

それを聞き高円寺は「ていうか、黒金さんはともかく火鳥さんは12年も一緒にいたんだよね?それなのに室隅君は気づいてないっぽいし。もしかしなくても鈍感?」

周りから見れば一目見ればわかるぐらいに火鳥さんは室隅君にアプローチしている。

それに気づかないとは鈍感すぎでは?ということである。

それを堂島がたしなめるように「最近になってアプローチし始めたのかもしれないだろ?」と室隅を擁護した。


そこで急に大河内が震え始める。


二人は友のそんな様子が心配になって「どうかしたのか?」と聞いたら返ってきた答えは予想外のものだった。

「これ俺たち消されたりしないか?真実を知っちゃったし、知らなかった時に妨害するようなこともしちゃったし」


それを聞いた二人は急に怖くなる。


「だ、大丈夫だろ。二人にとって知られて困るものじゃないしねぇ?」

「あ、ああ大丈夫。大丈夫だ」

二人とも気休めの言葉しか話せない。

これに天パの少年が言う。

「でも火鳥さんの実家って怖い人たちだって」

「あんなのただの噂だって」

「じゃあ学校にいた黒服たちは?」


三人は知る由もないがそれは黒金家の使用人である。


「あ、怪しい格好の二人組が文化祭の会場にいるのを見てた人がいるって」

室隅の両親である。

「「「や、やっぱりぃ~」」」

こうして時間は過ぎていく。


初日の午後も終わりを告げる。

そして日が代わり文化祭二日目

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