第3話いよいよラブコメ開幕か?!

前回までのあらすじ

主人公が痛い目を見ボッロボロになりました。


1:

皆さんお久しぶりです。

室隅です。

私は今叔父である五十嵐先生の運転する車に乗り、学校へと向かっています.。

いじめについては叔父に曰く、私が休んでいた日のうちに先生たちでどうにかしてくれたそうです。

だから安心できるとは限らないけどなにかあったら、その都度先生に言ってくれと五十嵐先生私のおじは言っていました。

先生とは駐車場で分かれいつもの教室に向かいます。

別れる直前にも叔父さんは本当に教室に戻るかどうかを聞いてきてくれました。

どうやら今回の一件は、職員会の方でも問題として扱われているらしいです。

私が望むなら別の部屋で授業を受けることも可能だそうです。


ただ私はそうはしなかった。

あの喫茶店でのことを思い出すと、大丈夫な気がするからだ。

案の定、教室についても何もされなかった。

そんな私の近くに馬飼君が来る。

「ごめん室隅氏。本当にごめん」

私は気にしないでと言った。

そうだ。悪いのは彼じゃない。

悪いのはいじめて来た側であり、彼は一番最初からこれには関わってなかった。

だから彼に非はない。

彼にも事情があったのだし、同じ状況になった時に私は彼を助けれたのかはわからない。

そんなことを考えているとチャイムが鳴り、五十嵐先生が入ってきてホームルームが始まった。

教室に入りながらこちらに注意を払ってくれた。

こちらも『大丈夫だ』と会釈で伝えた。


「おはよう、諸君。早速だが、喜べ野郎バカ共転校生だ」

クラスのそれも男子層に強い動揺が走った。

「ってことで入っていいよ」

そういって入ってきたのは金髪のサイドポニーテールに蒼い瞳、透き通るような白い肌に思わず息をのむような端正な顔立ちをした美少女が入ってきた。

「彼女の名前はアズマ=ウィリアム=ウェイト。英国と日本のハーフ、で良かったっけ?」

五十嵐先生がそういうとウェイトさんはきれいな声で返す

「えぇ、合っていますよ。英国イギリスから来ましたアズマ=ウィリアム=ウェイトです。これからよろしくお願いします。気軽にアズマって呼んでください」

それからしばしの自己紹介のあと、彼女の席が決められた。

彼女は目があまりよくないとのことだったので真ん中の列の少し前のほう。

ちょうど、私の右隣の席になった。

「よろしくね。え~っと」

「はじめまして、室隅へやすみです。室隅へやすみわたる。これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくワタル君」

そんなふうに二人で話していると五十嵐先生が「あ、早速親睦を深めてる感じ?だったら転校生に色々と学校のこと教えて上げて」と言ってきた。

「ウェイトさんが、それでいいなら」私がそう言うと

「もう、だからアズマでいいよ。これからよろしくね室隅君」彼女は先ほどとはまた違った笑みを浮かべてそう言った。


2:

放課後私達は部室にやってきた。

私『達』というのは私のほかに馬飼君とアズマさんもいるからである。

ことの発端は私が放課後アズマさんに学校の案内をしていたときに、彼女が漫画研究部に興味を持ったからである。

どうやら元居た学校にはなかったらしい。

そういう経緯もあって今彼女に部室の案内をしている。

「へぇ、ここが部室なんだ。え!?この漫画の初版って実在したの?あっ、こっちの漫画全巻そろってるんだ。あぁ~これもあるのぉ」

・・・もしかしなくてもアズマさんって

「もしかして漫画とか好き?」私は思わずそう言った。

それを聞かれてアズマさんは驚きを顔に浮かべて「わかる?」とだけ言った。

「わかりますよ。さっきから手に取ってるの、どちらかといえばマニアックに分類される作品ばかりですし」

「まぁだからこそこの部活に置いてあるんですけどね」

私と馬飼君はそう言った。

ちなみにここにある漫画のほとんどを用意したのは私達だけではなく、顧問である五十嵐先生や先輩たちである。

「ねぇ、私たまにここに来てもいい?」アズマさんは恐る恐るそう尋ねてきた。

そんなアズマさんを見て私と馬飼君は顔を見合わせ頷いてから言った。

「もちろん」

「何なら漫画研究部に入部も検討してください」

そして漫画研究部に新しい部員が入ってきた。


3:

昼休み・学校の屋上

そこにいるのは金髪の少女ただ一人。

少女はある人物と電話をしていた。

「あ、パパ?そっちは元気?・・うん私は元気。今はお昼ごはん食べたとこ。ママも元気だよ。学校生活?問題なくやれてるよ。あ、聞いて聞いて。あのね私と同じ趣味の子が二人も出来たの。それも男の子。ただ片方の子と話すとなぜか周りからんだよね。。他は特におかしなところは無いんだけどねぇ。あ、そろそろ切るね。それじゃあ」

電話を切ると、その直後に扉の開く音が背後から聞こえてきて、彼女アズマは身構えた。

扉の開く音が聞こえたから、ではない。

開く音が聞こえるまでそこに誰かがいると気づけなかったからだ。

彼女は今まで両親の都合で世界中様々な場所へ行った。

その中には自分の身は自分で守らなくてはならない場所もいくつかあった。

そんな事実に彼女は静かに恐怖する。

そして開いた扉の先にいたのは「おいおい、ここは天文部以外立ち入り禁止だって室隅から聞かなかったのか?」

自分の教室と部活の顧問だった。

「あなた、何者ですか?」

アズマは音源にそう問うた。

ただものではない。そういう思いからの質問だったのだが「何言ってんの?ただの教師だけど?」

返ってきたのは拍子抜けするような一言だった。

「・・・あ、スマホ!使っちゃだめだよ校内じゃ、まぁ今回は見逃すけど次から気を付けなよ」

その教師はその職種の通りの行動をとった。

「あ、ごめんなさい」

彼の言っていることをアズマの頭が理解し、そして言う。

本来言うべきことをそして「あ、あの先生こそ、ここで何を?」彼女の聞きたいことを。

教師(?)は屋上の手すりに寄りかかり、少し考えた後言う。

「ここでヤニ休憩、って言っても伝わらないか。タバコ吸いに来たの。屋上ここ以外で吸うと火災報知器なっちゃってね」

そう言って紺の髪をポニーテール状にした教師は自嘲気味に笑った。

「そろそろ戻りな。授業が始まる。あぁ、それと気を付けなよ、色々とね」

男は少女が去る際に、その二言を言い残した。

「?はい。次から気を付けます」少女がその言葉の意味に気づくのはずっと後のことだった。


4:

「何なんだよあいつはぁ!」

そう言って火鳥 楓は自室の壁を殴った。

理由はもちろん転校生についてである。

ここに来てあの黒金 英利だけでなく別の女まで室隅を狙い始めた。

それが腹立たしい。

いじめの一件があってから彼とは疎遠になってしまった。

その上でのこれだ。

挙句に休み時間中も彼と楽しげに話している。

高校に入ってからは自分とはそんなことはなかったのにだ。

(そもそもいじめの件はどうした?黒金の取り巻きは何故やめた?)

火鳥の頭蓋は思考を切り替えた。

(連休前は何もなかった。ならば連休中か?)

「あのアマぁ。今度は何を企んでいる?」

改めて少女は黒金ライバルについて考える。

幼い時に自分と室隅との蜜月に割り込む憎い女。

それが火鳥が黒金に抱いている印象だった。

しかし家が遠かったこともあり小中学校時代は現れなかった。

だが、高校になって再会した。

火鳥 楓は黒金 英利と再会したあの時のことを思い出す。

あの『自分が欲しいものはなんでも手に入れられる。それが当然だ』とでも言いたげな目を。

あの目を見て火鳥は黒金との再会に気が付いた(まぁ、室隅は全く気が付かなかったようだが)

現在はあの女がどう動くか分からずおまけに第三者の存在だ。

(チッ。手段は選んでられねぇか。)

彼女は一人で動くことを止め、自室を出て下の階へ降りる。

そこには何人かの柄の悪そうな男たちがいた。

「お?どうかしたんですかお嬢?」

そのうちの一人に少女は何のためらいもなく話しかける。

「ちょうどいいところにいた。添島そえじま。頼みたいことがある」

そう言って火鳥は自分より年齢も体格も一回りも大きい男にタメ口で話す。

「ン?何ですかい」

男の方も火鳥の態度が当然かのように対応する。

「うちで今、私が動かせる若いの全員呼べ、最優先だ」

「わかりやした。今呼んできます」

「あぁ、頼んだぞ」

そういって添島と呼ばれた男は駆け足でどこかへ向かう。

(こうなりゃ、どんな手だろうと使ってやる)

改めて少女の全力が使われる。

もう誰にも止められない。


5:

同時刻 件のリムジン

そこには生まれた時から黒金の世話をしてきた、彼女の執事兼このリムジンの運転手の内藤でさえ気分が悪くなるほどの重苦しい空気が流れていた。

(き、気まずい!!)

黒金の機嫌が悪い原因は明らかだ。

あの転校生だろうと内藤は予測する。

しかしそれを確かめる勇気が無い。

ちなみにこの執事がここまでクラスの内情を知っているのは黒金と同じクラスに内藤の娘がおり、何か起きる度に逐一報告が来るからである。

「はぁ、ねえ内藤。あの共まとめて行方知れずにでもなってくれないかしら?」

黒金は正気を失っているのかとんでもなく恐ろしいことを口走る。

そんなお嬢様くろかねの言葉に内藤は「それは無理ですお嬢様。転校生について情報が少なすぎますし、もう一人火鳥の方はすでに三度も失敗しています。それはお嬢様もご存じでしょう?」まず初めにNOを言った。

そして続ける「ですのであの二人を消すのではなく、お嬢様があの二人より室隅少年の好感度を上げれば良いのです」

ここにきて内藤は当たり前のことに立ち返る。

つまり、本来恋愛とはライバルを蹴落とすのではなく、相手に振り向いてもらうために自分を磨くものであるということを。

「何か案でも?」それについては少女も忘れているわけではない。

ただいじめの一件以降彼に避けられているから、その選択肢を無意識のうちに排除していただけだ。

内藤は案を提示する。

「お嬢様、近々学校で文化祭が行われることは既にご存じかと思います。そこであの少年を誘い好感度アップを狙います。娘たちだけでなく当日は我々使用人一同もサポートいたします」

内藤の意見に少女は疑問を口に出す。

「できるの?」その疑問に内藤は即答する。

「当日は一般公開されるので我々も行くことができます。準備期間中にも私の娘をはじめ、関係者がサポートします。あとはお嬢様次第です」

その返答を受け少女は今日初めての微笑を浮かべ応える。

「分かった。そうしよう。もう待っているなんて嫌だ。後悔なんてしたくない。機会があるなら最大限に使ってやる」

その返事を受け執事もまた答える。

「はい、頑張ってください」

何の変哲も特別な言い回しもない、それこそどこでも使われている。

しかし相手に勇気を与える一言を。


既に幕は上がった。

役者も揃った。

舞台は来る文化祭

思慕も計略も吞み込み少年・少女は突き進む。

先の読めない青春恋劇

どうかお付き合いいただこう

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