第21編 昼食
1 昼食
貴重な昼の1時間。目当ては豚骨ラーメンとついでに焼飯、唾をのむ。膝の角度は鋭角に自動ドアをこじ開けて。
2 自分を持て
目の前に二つ並ぶ店の中。どちらを選ぶべきなのか、人の量と席の量。他人の評価にすべてを賭ける。
3 あと2、3人だった
人の波は終わらない。時間の波は止まらない。後悔の波は全てを飲み込み、無念の声が腹から響く。
4 労働と報酬はイコールである
悪夢の午後が始まって。体の中は空っぽでコピー用紙も白紙のままで。上司の言葉もいつもの通り。労働の意味とは何か問う時か。
5 黄が9割、茶が1割
旅行土産の箱一つ会議机に置かれると、漂う芳醇、南蛮渡来。しかし出来上がった口の中、今更甘味は受け付けない。
6 冬は日が短い
時間外の重圧に飲まれて陽光ホライズン。LEDの明かりが視界を刺激して世界は白くなっていく。心はすでに真っ白だ。
7 退社
耐え抜いた自分の姿が誇らしく、それでもやつれてとぼとぼと。
8 帰りがけの買い食いの是非
帰り道、鼻孔をくすぐる香りにつられ、やってきたのは最後尾。無念を取るか帰宅を取るか。スマホを出して思い悩む。
9 お手伝いの成果
送られたてきた、写真に写る小さな笑顔。手にした皿は猟奇事件。背後の妻は上機嫌。一際大きく心が鳴った。
10 昼食
満ち足りた心は昨日に置いてきた。今日こそ決意を固めたら渡されたのは弁当箱。アーメン唱えるその顔は憎らしいほど微笑ましい。
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