第18編 チョコバー

1 登山の始まり


心の中は雨模様。ひょいと手に取る山の写真。涼しい空気に鳥の歌、木々の合間の陽光と。気分は5合の中間に。



2 登山靴


目玉飛び出る値札を前に尻込み数分、腕組み5分。靴の妥協は苦痛の入り口。ルビコン河を今渡る。



3 天候不順


山の天気は移ろい変わり、晴れの予定は雲となる。道の駅から眺める頂。名残惜しさが足場となって。



4 入山


快晴の山に踏み入るその手前、まったく不要なのだけど、自分の存在届け出て。ここより先は文明圏外、命じる肝が脈打ち始める。



5 山は冷える


夏の山を恐ろしさ、凍える空気凍てついて。流行遅れのダウンと言って笑った卑しさ、反響す。



6 休憩


上がる息が導く事実は運動不足の一言と。岩に腰かけ一息ついて、鞭打る体に飴塗って。



7 チョコバー


口の中、絡みつくのはチョコとヌガー。普段は避ける重厚甘が体を巡る快感に。今日は一日カロリーオフ。



8 靴擦れは起きていない


足の痛みが強くなる。慣らし散歩は5km、歩いた道はアスファルト。歩く道は土と草、たまに石ころ、足にかむ。



9 頂上


踏み入れた頂上、ついに成し遂げた。まだまだ太陽頭上にあって、視界のすべては雄大さ。心の霧は晴れていく。



10 明日のための気力


歩くつもりのない道と、走るつもりのない道路。とぼとぼと寄って開けたドア。陰鬱空気の部屋の中。それでも景色のあの色が、心の支えと実感す。

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