第10編 ココア
1 忘れ物
スマホを忘れて気が付いて、急いで戻った部屋の中。肌寒さを感じつつ扉を開けて、上着を見る。
2 給料
見上げれば月に一度の満ち足りた。かざす手のひら、血は巡り、吐き出されるのはやりきれない思いの重なり、満ち足りない。
3 ココア
目が覚めて、冴えてしまった夜だけの一さじ多めのお楽しみ。暗闇をカップ片手にココアどこ?
4 遠足
弁当箱を広げると、色とりどりのおかずとごはん。教室の木目に少しもなじまない。大吉と書かれた紙皿をテルテル坊主が被ってる。
5 就職
入り組んだ迷路を抜け出たその先は、長く険しい一本道。肉刺に靴擦れ耐えながら、ある日、横道迷い込む。そこは地獄か楽園か。
6 夢の続き
時計の針が12を指して鐘が鳴り、眠気殺して起き上がる。最初にため息履くけれど、頭の中に残したガラスの靴光る。
7 タイムカプセル
大人になったその日の夜、思い出した約束を頼りに思い出、公園へ。しびれを切らして一人掘る。見つけた箱は空っぽで子供が一人泣いている。
8 辞表
便箋に想いをしたため封をする。言葉だけでは伝わらない。メールだけでは味気ない。手紙の重さが何よりも心地よく。
9 心機一転
床に散らばる髪の束。鏡の前には見知らぬ人がひどい顔で笑ってる。似合わない、みっともない、そんな言葉が降ってきてずぶ濡れのまま歩いてる。
10 高音
音たどりひたすら高くやってきた。見上げればなお高みが続いてて、じれったさ、いつの間にか憑かれてる。
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