第24話 思いは実らず

 僕は幼馴染の天城龍征を真っ直ぐに見つめる。アホでバカで何を考えてるか分からないけど、純粋で根は優しい人を。


「よう莉央。すまんが俺は傷心中なんでしばらく待ってくれ。一年くらい」


 彼は目を瞑り、自分の胸に手を当て苦しそうにそう言った。


「………何言ってんの?」


「えっ、告白じゃないの?」


「違うよ!」


 本当にバカ………いや、けど振られた直後に呼び出しくらったら、そう思うのか?いや、まずそれを普通本人に言わないからやっぱりバカだ。


「えー、じゃ何?噂はデマだよ。俺童貞だもん」


「知ってるよ。そのくらい………これで少しは懲りた?」


 僕が今すぐ龍征を助けない理由、それは学ばせる為だ。何でもかんでも簡単には信用してはいけないという事を。

 確かに龍征の人を直ぐに信じる性格は彼の魅力の一つだ。けど、大きな欠点の一つ。お人よしが損をするこの世界で、彼のその性格はあまりにも合わない。

 本当は世界が悪いんだろうね………、どうして人を信じるを責めないといけないんだろう。けど、この世界で生きる彼の為だ。


「懲りたって何が?」


 はぁ、そのアホさ加減は少し呆れる。いい所でもあるんだけどな。


「烏丸鏡花のことだよ。この件で少しは人疑う事を覚えた?」


 もう一度彼に分かりやすく伝える事にする。これで分かってくれたら良いが、彼の表情は変わらずケロッとしていた。


「なんだそんな事か?安心しろ、俺お金関係だけは全部疑うから」


 家計簿で少しも合わないと、と続ける彼に少し頭が痛くなってくる。人間関係について言ってるのに。


「違う!それ以外も疑え。傷付くのは龍征、君自信だよ」


 僕の叫びに対して龍征は少年のようにニコッと笑う。………///、なまじ顔がいいせいで少し困る。


「ありがとな莉央、俺の事心配してくれて。けどごめん。俺はそう簡単には変わらないよ」


 だが、その笑顔に対して僕が欲しい言葉は無かった。………変わらない?何を言ってるの、最近騙され、傷付き、遊ばれたのに?


「………ふざけてる?僕は本気で言ってるんだよ!」


 僕の怒号に対して、彼は表情を変える事なく言った。


「俺だって本気で言ってる。だからごめん」


 彼はそう言って、頭を下げた。………何を考えてるのか、どうして謝るのか、どうして変わらないのか何一つ、理解が出来ない。


「もう一度聞くよ。考えを変える気はないの?」


 無駄と分かっていても聞いてしまった。


「ない」


 彼はそう即答した。そして昔の記憶を思い出す。


 ◇


「龍征!いつもいつもアホみたいな事すんな!」


「どこがアホだか言ってみろ!天才だろ」


 そう言って龍征は、自作の翼を身にまとい空を飛ぼうと腕を動かした………だか、普通に飛ばない。


「くっ、俺にもう少し大胸筋があれば!」


「そう言う問題?はぁ、もう少し大人になってよ」


「断る!」


 イラッ「なんで、そこだけ頑固なの。焼きそばパン買って来いとかだと聞くのに」


「ああ、そう言うと思って莉央の鞄に入れてるよ」


 僕はすぐさま鞄を確認する。………本当に入ってた。


「俺が大人になったら、焼きそばパン買ってこなくなるんだぞ。いいのか?」


「別にいいわ!」


「良くないだろ。だから俺は変わらない、それに」


「………」


 その耳は飾りかな?


「俺、自分の性格気に入ってるんだ」


 そう言う龍征は心底楽しそうだった。


 ◇


 その性格のせいで、泣いたくせに!!


「ッ!💢もう知らない。勝手にしろ!」


 僕はそのまま彼の前から走り去る。


 彼の考えを変えるには、きっと痛い目を見るしかない。きっとこの先、彼は学校中からイジメられる。SNSにも拡散され言われのない誹謗中傷が浴びせられる。その時になって初めて後悔しろ!そして僕が言ってた事が正しいんだって知るんだ。その時になって初めて助けてやるよ。


 僕はそう思い。証拠を公表するのをやめた。





あとがき


 久しぶりの渡辺です。よう実最新刊読みました。最高です。その他にも勉強の為、俺ガイルを読んでます。心理描写すげぇわ。

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