第3話 下僕

 終わったもんはしょうがないので、とりあえず下僕として誠心誠意働く事にします。


「お嬢様!どうかお気を付けて」


「うるさい下僕。早くしろ」


 そう言われる俺は女児を肩車して公園を駆け回る。………何これ?


「ふむ、悪くない」


「はっ、ありがたき幸せ」


「けど乗りごごち悪い。四つん這いになって」


「仰せのままに」


 そんな感じで俺はお嬢様の下僕として2時間くらい働いた。時給出るかな?


「下僕、喉渇いた」


「はっ、少々お待ちを。どれになさいますか」


 俺は自販機の前に行き、お嬢様の好きな物を選ばせる。と、その時


 ――殺気!?


 俺は背後からの上段蹴りを勘を頼りに振り向き様に腕で守り、咄嗟にお嬢様を守る体勢に移る。


「お嬢様!敵が現れました」


「そう、なら私を守って」


「はっ」


 俺はどっかで見た事ある銀髪碧眼の美少女に立ち向かう。お嬢様を守る事が俺の使命、例えこの命尽きようと守ってみせる。


 俺のそんな覚悟とは裏腹に、目の前の敵はなんか動揺してた。


「な、なんなんですか貴方?私の妹を攫って警察呼びますよ」


 ん?妹………て事はお嬢様の姉君!


「お嬢様、敵がそう申しておりますが誠でしょうか?」


「嘘」


「アリィ!?」


 チッ、なんたる事だ。まさか嘘を使ってお嬢様の気を引こうとするなど!


「このロリコン変質者ガァ!!」


「ええぇぇ!?」


 俺の騒ぎと共に周りに人がざわざわと集まって来た。それに敵は安堵したのか少しホッと胸を撫で下ろし、言った。


「私の妹が、不審者に誘拐されてるんです!」


 何を言っているんだろうか?俺はお嬢様の忠実なる下僕、お嬢様を誘拐など切腹ものである。しかも、お嬢様を攫おうとしてるのはお前ではないか!


 そんな俺の思いが伝わったのだろう。周りの人達は訝しげな顔して特に何もする事が無かった。


「いや、え?なんで」


 それに戸惑う敵だが、人々が訳を口に出す。


「だってその人ずっとその子と、遊んでだしね」


「面倒見の良いお兄さんよね」


 なるほど、かれこれ2時間、お嬢様に誠心誠意使えてたことが周りの評価に繋がったのだな。


 それと同時に周りの人が敵に対しての怪訝な目を向けて、「こっちが誘拐犯?」などなどボソボソと噂を立てた。


 その周囲の反応で敵が今にも泣き出しそうになる。


 フッ、勝機!


「その誘拐犯を捕まえてくれ!」


 それと同時に、敵が泣き出した。



 ◆



 公園の隅に敵(姉君)が座り不貞腐れていた。


「なんで私がこんな目に………」


 あれから警察に呼ばれそうになった所で、お嬢様が真実あかし、なんやかんやあって今に至る。


「まさかお嬢様の姉君だとは、今までのご無礼お許し下さい」


「許す」


「なんでアリィが勝手に許してんの!?ていうかあんた誰!」


 姉君がそう言ってプンプン怒ってる。落ち着きのない人である。だが大丈夫。穏やかな言葉は怒りを沈めるのだから。


 俺は優しく丁寧に言った。


「ご紹介遅れた事、深くお詫び申し上げます。お嬢様の下僕です」


「うん下僕」


「いや誰!?アリィこの人、一体全体誰なの?」


 そう言われるお嬢様は俺を見て頭を傾げた。


「下僕、名前何?」


「知らなかったの!?」


「天城龍征と申します。お嬢様」


「分かった龍征」


 そんな問答に姉君が頭を傾げて少し考えた後、何かを思い出したように叫ぶ。


「貴方同じクラスの問題児じゃない!!」


 俺はその言葉に遅くなって気付く


「ソフィア・D・クリヴォシー」


「そのDはどっから来たの!?ソフィアよ」


 俺のメインヒロインではないですか。

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