第2話 メインヒロイン

「今日は転入生を紹介する。入りたまえ」


 そう言い教室の扉が開かれる。


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。どうも天城龍征です。これから1年間よろしくお願いします」


 俺はそのまま自分の席に座ろうとするが女教師に肩を掴まれた。


「おい、待て」


 チッ、遅刻がバレやがった。


「先生見逃して下さい。30超えて彼氏いなかったら結婚するって誓うんでぇボケェファ!?」


 俺は股間を蹴り上げられその場でうずくまる


「あいにく私は25だ。まだ焦る時ではない」


 そう言って、30になって昔の生徒に連絡取らないでくださいよ。

 

 ていうかメインヒロインが入りづらそうにしてるな。なぜだ?←原因


「この馬鹿のせいで、すまなかったな。入っていいぞ」


「は、はい」


 その瞳は、えーと、蒼く宝石の様で、髪は、ツヤツヤじゃなく絹織物のように………ロシア人のハーフの銀髪碧眼美少女だ。これで伝わるだろ。


「えーと、親の転勤で来ました。ソフィア・クリヴォシーです。ウクライナと日本のハーフです。生まれはウクライナですが育ちは日本なんで日本語ペラペラです。1年間よろしくお願いします」


 とまぁ、緊張がある自己紹介だったが見た目と最初に俺が出てきたギャップによりクラス中から拍手が鳴り響いた。………ウクライナだったんだね。


「えーと、ソフィアの席だが………龍征の隣しか開いてないな」


「おい、なぜ躊躇ってるんですか先生?早く案内して下さい!ほら早く!カッモーン」


「誰か変わってもいいって奴いるか?」


「え?ちょっまっ」




 ――俺の隣が知らない男子生徒になった。つか誰コイツ?


「よう兄弟。これから一ヶ月よろしく頼むよ」


「ふざけるな、お前なんで変わったんだよ」


「なんでかって?あんな美少女が僕が座ってた席に座るんだぞ………興奮するじゃないか」


「先生ー!急遽席替えを申し込みます」


「却下」


 なんて事だ。俺のラブコメ物語が出だしから崩れかけてやがる!何故だ!どこで間違えた!


 ※最初から


「そう嫌がるな兄弟。俺はアンタの事尊敬してるんだ」


「つか、お前誰だよ」


「イケメンで高身長に加えスポーツ万能。ムカつく事に側を通る度に良い匂いがするお前が性格だけで女子から全くモテない。これほどおも……尊敬できる点があるだろうか?」


「ぶっ飛ばしていいか?」


「まぁ、落ち着け兄弟。俺は田中侑たなかあつむ。しがない普通の男子高校生さ」


 俺はコイツが自己紹介した事で、ある事を思い出した。あ、コイツ友人キャラじゃん。主人公とヒロインを結びつける裏工作をやる奴だ。

 ………仲良くなって損はねえ。


「そうか侑っていうのか。よろしく。LI◯E交換する?」


「フッ、よろしくお願いします。あ、これ、LI◯EのQRコード………」


 そうやって俺らは友達になった。


 ――ピコン


 LI◯E

 これからヨロシクネ❗😊✨僕ちゃんとい〜〜〜っぱい思い出作ろうゼッ❗👍💕楽しみダネ〜💕



 ………やっぱ、友達やめようと思う。



 ◆


 ――ハァー


 俺は先生の授業を聞きながら溜め息をつく。結構やらかしてしまった。


 クリヴォシー・ソフィア、このラブコメ世界のメインヒロイン。そしてこのラブコメは高2からスタートする物語。そして物語で一番初めに主人公が問題を解決するのがコイツだ。


 あー確か、痴漢されてるの助けたんだっけ?いや違うわ。悪質なナンパぁ〜〜も違う。え、なんだっけ忘れた………しばらく付きまとえば分かるだろ。


 ※ストーカー爆誕


 そして放課後!


「よし、今すぐ後を追って」


 ガシッ!?俺の肩が尋常じゃない力で握られた。だ、誰だ!


「お前は生徒指導室だ」


「あ、ハイ」



 ◆数時間後〜


 あのババァ反省文10枚寄越しやがって。全部チャットGPTにやらせたけど。


「だが大丈夫だ!ソフィアの家は何となく分かる気がする!」


 30分〜〜


「あかん迷子になってもうた」


 俺は全く知らない公園で黄昏てた。マジでここ何処?


「お兄さん何してるの?」


 ブランコに乗ってたら、小さくなったソフィア見たいな女の子が話しかけた。あいつ妹いたっけ?いたことにしよう。


「とある女の子を追いかけてたら迷子になったんだよ」


「ストーカーって奴ね」


 💢


「違うよ。ただ僕はその子からモテモテになりたいだけだよ」


「変態さん?」


 💢💢


 さっきからなんだこのクソアマ。小さいからって調子乗りよって。仕返ししてやる。


「おいおい、俺をみくびっちゃ困るぜ。くすぐりまくって泣かせてやる」


 ――ピロロロロロロロロロ


 ノータイムで防犯ブザー鳴らしやがったこのガキガァ!


 だが、俺を舐めるなよ迅速果断、即断即決、出来るのが俺の数少ない良い所。俺は脇目もふらず土下座した。


「………流石にそこまでプライド無いと引く」


 そう言って防犯ブザーを止めた。


 フッ、見たかこの俺の成果を。プライドを捨てた結果、ロリコン社会不適合者と言う烙印を押されずに済んだのだ!天才ではなかろうか?


「お兄さん顔上げて」


「ん?」


 なんという事でしょうか、顔上げた瞬間パンツが見えるじゃありませんか!複眼複眼


 ――パッシャ


 俺はそのカメラの起動音を聞いた瞬間、全てを悟った。


「は、ハメられた!!」


 急いで後退るが、もう時すで遅し。俺の目の前には新しい玩具を貰った無邪気な表情の女児がいた………。


「ばら撒かれたく無かったら分かってるよね。お兄さん」


 俺の人生終わった。

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