第4話
目が覚めたときには日もすっかり暮れて、窓の外に目をやると、東の空には満月がポッカリと浮かんでいた。「お口直し」にいい夢を見れればと期待していたが、余程深い眠りだったのか、どんな夢かすら覚えていない。
人気がない。いつもなら寝ていると親が嫌味を言ってくるので、おちおち寝ていられないのが、今日はぐっすりと眠れたのだ。
がらんとした家は、どこか不気味さを感じる。私の自宅は郊外とはいえ東京にある。しかし、まだ深夜でもないのに自宅だけでなく街中がひっそりとした感じだ。
小学校の低学年の頃だろうか。今日のように、昼寝をしていたら両親が妹を連れて出かけていて、目が覚めたら家が静まりかえっていたことがあった。訳もなく不安になり、泣きそうになった。物音がしたら両親が帰ってきたと思い、一階に駆け下りるのだが勘違いでがっかりした。遅い時間に本当に帰ってきたときにはホッとした。
流石に今は泣きそうにはならないものの、何となく寂しい。
私には真穂という二歳違いの妹がいる。既に行きたい大学を決めていて、親元を離れて一人住まいをしようと決意しているようだ。私も一人住まいでも良かったのだが、結果的に自宅から通える大学に落ち着いた。
父は「学部なんてどうでもいい。少しでも偏差値の高い大学に行け。」と私に責っ付いた。学費を出してもらう手前、それに合わせようとして今の大学にしたのだ。妹が立派に感じる。
「あ~あ、真穂にはかなわないな・・・」
最終的には、いつも自分の不甲斐なさを嘆く。寂しいやら、不甲斐ないやらネガティブな感情に押しつぶされる。
「どうせ嘆くなら、はじめからやっとけばよかった。」という後悔も襲う。
「人と比べるな。」
咎めるように妙な声が聞こえたような。
口うるさい「ご神木」は近くにはないはずだが・・・
「分かっているんだけど、どうしても比べちゃうんだよ~。」
色んな本にも書いてあって理屈では分かるのだが、気がついたら誰かと比べて劣っている自分にいつも凹んでいる。
ベッドで横になったまま後ろを振り向くと、部屋の前に硬い表情の父が立っていた。あれは父が言ったのか、いつの間に帰ってきたの?
通りで「紋切り型」の「立派」なアドバイスだ。父は中学校の教師をしている。恐らく生徒に威張り腐って言っていることを、そのまま言っただけだろう。
「本当にあのご神木は御利益あるのかしら?」
父に言うと大変なことになるが、神様を変えた方がいいのではと思う。
「父に内緒で自分に合う神様を探すか。」
父の意に逆らうなんて選択肢はなかった。もしすれば、叱責を受た挙げ句、見捨てられて、孤立して、生きていけなくなるのでは、とさえ感じてしまう。どこの家庭でもそんなものなのか。それとも私だけなのか。
それでも今回は
友達に聞いてみるか。図書館に行って神様に関する本で調べてみるか。
などと、ジワジワ思いが膨らんできた。
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