つれていって
第1話 冬の夜
さっきまでの赤い夕焼けが何事もなかったように真っ暗になる。冬休みに入り生徒がいなくなった学校を一人寂しく出ると、北風が容赦なく吹いてくる。マフラーに顔をうずめているのに、なんだかまだ襟元が寒い。生徒会の仕事を終えて家に帰るところだ。
「ふう、冬休みだというのにやることがたくさんあるもんだ。」
つい愚痴を口にしてしまう。
生徒会の他の子たちも手伝ってくれているが、何せまだそんなに日が経っていない。「三年生を送る会」は生徒会が主催になる。いろいろな出し物でお世話になった三年生を労うのだ。去年の生徒会長は現実主義で無駄な出し物は論破して出場を制限していたようだ。
だからそんなに楽しい物ではなく形式的な物になった。それでも1、2年生がいろいろと考え卒業生を楽しませていた。なんだか寂しかったので、今年は楽しく3年生を送りたいと思っている。それでもまだまだできたての生徒会はうまく回っていない。あいつに相談すると
「ふ〜ん、好きなふうにやれば。お前の好きなふうにやればうまく行くって。」
なんて言って全然本気で聞いてくれない。なんでもできるのでぜひアドバイスはもらいたいのに。私は去年の会のことしか知らないので、どうやったらいいかわからない。わからないからいろいろと大変になってしまっているが、生徒会のみんなは少しずつ協力して一つになってきているので、このままうまくやって会を成功させたい。
「こういうことって、私より彼の方が得意なんだけれどなぁ。」
中学校の時の彼はこういうイベント事には欠かせなかった。いろいろなアイデアを出し、催し物を成功させていった。ちゃんと校長先生に直談判したり、商店街に協力を仰いだりしていた。そういうところみんなには伝わってないよなぁ。私は昔からいっしょなので知っている。
家が向かいなので相談しようと彼の部屋を見る。
「なんだ真っ暗じゃん。どこ行ってんのよ。」
この前クリスマスイブに告白をしていた。ものの見事にふられたらしい。私は生徒会の会議があったので見に行けなかったけれど、親友の話だと、盛大にふられていたらしい。ほっとしたけれど、
「なんで私のところに来ないのよ!」
つい口から出てしまっていた。
私は待っている。彼からの告白を待っている。
そんなこと思いながら家に入る。
「ただいまぁ。」
「おかえり〜。なんだか疲れているみたいね。」
「うん、ちょっとどうしていいかわからないことがあったから先生に相談してた。」
「そう。」
私はママに聞いてみた。
「隣のあいつどこ行っているか知ってる?」
「そうね〜、一旦帰ってきたけれどまたどっか出て行っちゃったわよ。」
「そうなんだ。」
「気になるの?」
なんだかママがニヤついている。だから私は気にしていないそぶりをする。
「別に。ただ最近部屋が暗いこと多いから、どこ行ってんのかなぁって思っただけ。」
「そう。」
ママはそれだけ言ったらまたニコニコしながら夕飯を作っていた。
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