第3話 ツノガエルは可愛い
ツノガエルというカエルをご存知だろうか?
一言で言うならカエルはカエルでもペット用カエルの一種だ。
カエルの場合、基本的にペットショップで販売されているものの多くは野生の個体を捕まえてきたものをそのまま販売している。
野生動物として生き残ってきた個体たちなので、警戒心が強い傾向があり、餌付け(ピンセットを飼いしての餌やり)がしづらかったり、稀に病気や寄生虫で死にやすかったり、そもそも野生個体なのですでに長く生きていて寿命が短かったりと、色々な面で扱いにくい部分があったりする。
だが、このツノガエル類は珍しくも人工的に繁殖、安定して流通しているカエルで、通年を通して手に入りやすい。
しかもオタマジャクシから購入できるため、カエルになる変態過程を観察できる楽しみもあるし、人の管理下において繁殖が盛んに行われた結果か、オタマジャクシの頃から育てるかは分からないが、警戒心が薄くて餌付けが簡単、さらには両生類としては唯一、犬猫のように品種改良による様々な品種が出ていて、専用の人工飼料までもが売ってたりするために餌の入手性の高さも相まって飼いやすいカエルである。
そして、今回はそんなツノガエルについて語りたいと思う。
まずカエルにはどこに生息するかで大まかに大別することができる。
地表付近を生活の場にする地上棲、樹上や草の上で生活する樹上棲、肺を持ちながらも殆ど水中から出てこないまま生涯を過ごす水棲、そして、水辺からあまり離れずに水中と陸を頻繁に行き来する半水棲。
この4種である。
ツノガエルはこの中で、地上棲にあたるカエルだ。
名前の通り、種類によって大きさの異なるツノのような突起物が目玉に着いてあり、ずんぐりむっくりした体付きが可愛らしく、待ち伏せ型の狩りをするタイプなのか動き回らないがために体の大きさの割には小ぶりな虫かごで飼える省スペース性も含めて非常に飼いやすいと言えるカエルである。
さらには上記で述べたように餌の入手性、餌付けのし易さもあって、生き餌の類を必要としないのもまた素晴らしい点である。
そのうちの基本原種をいくつか紹介しよう。
まずはベルツノガエル。
基本的には背中に赤みが混じる緑色のカエルで、ツノガエルの中では1番餌に対して貪欲で、そのためか大型化しやすい。
餌に対する反応の良さから飼いやすさと言う点ではナンバーワンである。
カエルの多くは生き餌しか食べない、なんてよく言われる。
カエルサイズの生き餌となるとメインは昆虫となり、カエルを飼いたくても虫はダメ。みたいな形で飼うことを諦めた人も多いのではないだろうか。
が、ツノガエルにおいてはそんな心配はいらない。
と言うか、ツノガエルに限らず、だいたいのカエル全般に言えることだが、カエルがなにをもって餌として判断するのかは1に動き、2に口に入れた際の食感、3に味や匂い…と言ったところだ。
ではなぜカエルは生きた餌しか食べないと言われるかと言うと、捕まえてきたカエルは自身より大きな生物である人間にビビり、餌を食べるよりも警戒することを優先するからである。
捕まえてきたカエルに餌を与えるには、まず動かさないと話にならないわけだが、動かすためには人の手、ないしはピンセットで摘んで動かしたりする必要が出てくる。
しかし、当然ながら手から食べるどころか見慣れないピンセットにも警戒して餌を食べるどころではないのである。
そうなると自分から動いてくれる虫などを生きたままケースに入れて食べるのを待つしかない、なんてことになり、そこから生きた虫しか食べないなどと言われるのだろう。
実はカエルも子供の時から飼育するとそのあたりの人間に慣れて、警戒心が甘くなり、ピンセットからちょうど良い固さの人工飼料を食べてくれたりする。
慣れたカエルは種類にも寄るが、手から餌を食べるし、なんなら指を食べようとしたり、飼育者が近づくだけでコチラを見上げて餌待ちの姿勢になったりもするから、より可愛く感じるもので、カエルにもそれなりの学習能力はあるようである。
閑話休題。
ツノガエルの話に戻るが、ツノガエルの場合は先述したように流通している個体は基本的に繁殖個体で、さらにはツノガエル自体が比較的物怖じせず、貪欲である種類のカエルであることも含めて、餌に困ることがないカエルなのだ。
なんなら指にも噛み付く。
そして、カミソリのような歯でガッツリ出血するまでがセット。
嘘か真か、噛まれた経験を経て初めてツノガエルの飼育者は玄人を名乗れるとか…
次にポピュラーなカエルはクランウェルツノガエル。
ツノの発達具合は控えめだが、上記のベルツノガエルよりはまだハッキリとツノが目立つ品種であり、様々な改良品種もクランウェルツノガエルをベースに生み出されている。
体色のバリエーションが多い分、コレクション性の高さもまた特徴の一つ。
食欲もベルツノガエル並みか、それより若干控えめ…かな?ぐらいの貪欲さで餌やりに苦労する事はほぼないだろう。
最後にアマゾンツノガエル。
一般的に流通するツノガエルの中では1番、ツノが発達してカッコいいカエルで、餌喰いも良い。
ただ、他2種に比べて明確に貪欲さが足りないように感じる面もあり、餌に対する反応が良くないことや個体もいる。
たまたま私の飼育した個体が…と言う可能性もあるだろうが、そういったケースもあり得る少し玄人向けのツノガエルとも言える。
他にも幾つかの種類がいるが、今回は割愛させていただく。
私は飼育した事ないからね!
さて、肝心の飼育法だが、私はいらない服やらの切れ端をケースの底に敷き、体が全部つかるくらいの水入れを用意する。
そして、1週間に一回の餌やり。水入れが汚れたら取り替え。
こんなもんである。
成長期の幼体であれば餌やりの頻度を高めたりするが、まあ、飼育はだいぶ楽である。
一つ一つ解説していく。
まずは底に敷く布についてだ。
ツノガエルの飼育法には幾つかのテンプレがあり、その幾つかを試した結果1番楽だったのがこの飼育スタイルだったのだ。
ツノガエルは先に述べたとおり地上棲のカエルだ。
正確に言うなら地中棲と言えるかもしれない。
ツノガエルの飼育に土を使うスタイルがある。
これは自然下ではツノガエルは土に潜って、獲物が近くを通るのを待ち伏せする環境を再現して、鑑賞面の向上やストレス軽減を目的とした飼育スタイルだろう。
だが、私はこれを試して思った。
「むしろマイナス面がデカすぎる」と。
ツノガエルは貪欲だ。
餌を与える場合、土ごと飲み込んでしまいがちである。
胃腸に良くなさそうというのが一点。
実際に腸閉塞になるらしいなんて話もある。
土を食べて腸閉塞になったなんていう実例を見たことはないが。
次にらツノガエルが掘り起こした土が割とばら撒かれて景観を損ねると言うのが一点。
何よりも土中に糞をした場合、取り除けない、気づきにくい、糞が溜まることによる雑菌の繁殖からの病気が心配という衛生面のデメリットがデカすぎて、私は土飼育をやめた。
実際に気づいたら肌が荒れていた事があったりもした。
潜れる環境は作るべきじゃないというのが私の結論である。
次の飼育スタイルはマット飼育だ。
観賞魚用に使う濾過マットという製品がある。
一言で言えば通水性の高いスポンジ、というか粗めの布というか、そんな感じの製品である。
これをケースに敷いて、水をヒタヒタになるまで入れるという飼育法だ。
この飼育法はマットを敷くだけでいいという、かなりのシンプルさがメリットであるが、私はこれもやめた。
これも衛生面で問題があったからである。
私の飼育スタイルは、簡略化によるメンテナンス性と病気が発生してもすぐに気づけるように観察のし易さを重視する。
このマット飼育だと一見、二つとも条件を満たしているように思えるが、実はカエルもオシッコをする。
いや、実はというか当たり前か。
カエルは水分を口からではなく、お腹から吸収する。
というか水をお腹がタプタプ状態になるまで蓄えることができる。
カエルは大まかに分けて4種類いると言ったが、水場から離れる生態をしているカエルほど蓄えることができる水分量が多くなり、比較的身近なアマガエルなどは太っているように見えて、実は大部分がお腹に蓄えた水でしたなんてことも。
この飼育スタイルは常に水に浸かれる環境を作っていつでも水を吸収できるようにしつつ、汚れたらマットを洗うか交換するかで簡単に掃除ができるようにというメンテナンス性の高さも相まって、だいぶぶんの飼育者はこのスタイルを使いがちだ。
しかし、これには厄介な点が一つだけある。
ここまで言えばお分かりかと思うが、水をヒタヒタにした環境での飼育だとぱっと見で、オシッコをしたのかわからず、一見綺麗に見えてオシッコまみれの水にずっと触れ続けていることになる。
毎日、水を換えれば良いだけの話だが、いささかそれは面倒だし、カエル自体にもストレスになりうる。
ツノガエルの寿命は10年以上はあると言われているので、10年間毎日…というのはちょいと厳しいきがしないでもない。
水を変えるだけと言っても、古い水を捨てるのも面倒で、ウンチなんてした日には掃除にも数分はかかるだろう。
実に面倒である。
して。
私の飼育法はどうなのかというと、常に水を浸すのではなく、水場を別で作る事で、水分補給の場所を作るように。
それによって、水分補給をする際に排泄をするというお腹タプタプ系のカエル全般の習性を利用して、水場で排泄をするように促す事で、ウンチやオシッコを水入れの水をそのまま捨てる事で処理するという、非常に簡単な作業へと落とし込むことに成功したのである。
たまに水入れにしない時もあるが、まあそこは致し方なしと割り切って、敷いていた布ごとゴミ箱にポイである。
布はこのために敷いてあるのだ。
水入れ場から出た時に体に付着している余分な水分を吸収したり、水入れ場以外でオシッコをしてしまった際に吸収してもらうという理由もある。
ちなみに何も敷かないと、それらの水分で床がべちょべちょになり、そうなるとカエルが「今、水場にいる?」と判断してしまうのか、ところ構わずオシッコやウンチをしてしまい、さらにべちょべちょになって、水場にいると考えてさらに〜と負のスパイラルで一気に汚されるので、どんな飼育スタイルにせよ、何も敷かないのは避けるべきである。
しかもオシッコやウンチの汚れから離れようとして、普段のおとなしさはどこへやら。ドタバタ暴れ出したりする。
どんな飼育スタイルにせよ、汚れた環境になるとそこから逃げ出そうとして活発に動き出すので暴れ出したら掃除が必要という目安にしよう。大人しく、餌を見つけた時以外はほとんど動かないのが正常な状態である。
それを踏まえた上で是非に飼ってみて欲しい。
ちなみに他の種類のカエル、それこそ日本にいるヒキガエルやアマガエルといったカエルも幼体のころから飼育を初めて人に慣らせば人工飼料に餌付けることは可能である。
ただ、ヒキガエルやアマガエルは個体差によるバラつきが多い印象で、オタマジャクシからカエルになってからしばらくは虫が必要な時もあるので、虫が苦手な人はちょいと無理があるカエルかもしれない。
アマガエルは上陸してからすぐに人工飼料を食べるものもいるが、ヒキガエルは上陸後のサイズが非常に小さいために、餌付けが難しい印象である。
生き物エッセイ集 百合之花 @Yurinohana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。生き物エッセイ集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます