草原

 ふわふわとした雲が木よりも高く、鮮やかな花が風と踊る。夢のような草むらが目の前に広がる。不思議だ、とても。この後は街に買い出しに出かけ、家に帰り、日が暮れるまでに夕飯をすまさないといけない。街はいつもにぎやかだ。余裕を持って歩ける道に、客と店員が話す、商品は外気にさらされながらもいい艶を出している。街といっても大きいわけでもなく、例えば放牧されているような生き物、牛とかが個体で山を歩いているとしたら、どこかの草むらに極端に群がっていたりするような、そしてすぐ周りには転々とまた牛がいたりするような、そんな街である。

 あゝ、やらないといけないことの方が人生面倒臭い。「そもそも面倒臭いという感情を人に備える必要があったのだろうか。怖い、痛い、辛い、そんなひどく気持ちが落ち込む感情さえ生きるために必要であるのになぜ、面倒臭いと人は思うのだろうか、いやそもそも面倒臭いと思うことも面倒臭いのである」こんなことをボソボソと考えているうちに太陽が九十度から六十六度ほどにまで傾き出した。「まずいな」ハッとした私はまるで地中に根が張ったかのような腰を草原から引き抜いた。

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