プロローグ

 どうも朔月咲夜です。

 本日から『RP《ロールプレイ》で世界を虜にする』の投稿を始めます。他作品の更新や執筆もありますので更新頻度はとなりますのでよろしくお願いします。


 それでは当作品をお楽しみ下さい!!


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「はい、はい。なるほど……はい……」


 若い男の声が、薄暗い部屋の中で反響する。


「仕方ないですね……はい……」


 薄暗い部屋の中では男の声が反響し、それを男自身も理解している。

 ネッ友にも指摘されたことがあるが、今の期間はこうするのが普通だから仕方ない。


 若い男はミニマリストだとか変なこだわりがあるとか、そういった類の存在ではない。普通の男子高校生で、普通の顔で、普通の体格。何の面白いみもないただの平凡な男だ。

 唯一平凡でないとすれば、今の自分が本来の自分ではないという事ぐらいだろうか。


「再就職ですか……今までありがとうございました。はい。……はい? 確かにまた何処かで会えるかもしれませんね。その時はよろしくお願いします」


 ゴトン。

 鈍く重たい音を鳴らしてヘッドセットが机に放り出される。

 若い男は頭を抱えて深く深くため息を吐いた。


「……このRPロールプレイは駄目だったな」


 若い男が率いる3つ目のクランが解散した日だった。




 ◆◆  ◆◆




千桜ちはる~!」

「ぐへぇっ」


 俺が寝ぼけ眼で通学路を歩いていると、いきなり後ろから誰かに突進される。


 相変わらず力加減が出来ていないし、朝だというのにこの元気MAXな声は……やっぱりか。


「朝から元気だな馬鹿朱音あかね。その馬鹿力を自慢するのは良いけどな、突進だけはやめろ。腰をやるだろうが」

「はー? もしかして今私のこと馬鹿って言った!? 千桜のが馬鹿だから!」

「期末試験の順位」

「うぐっ!」


 俺の指摘に朱音が大袈裟に苦しむ演技をする。

 うぐぐ~っとフラフラする感じに。相変わらずの大根演技だ。


「演技も赤点級だな」

「あ、あの中間試験はたまたまだし! 普段はもっと点数高いから!」

「はいはいそうじゃのう~ポジティブで良いのう~」

「お祖父ちゃんみたいな言い方しても馬鹿にしてる感は消えてないからね!? ってかそれ言うなら千桜だって高校1年生でそんな辛気臭い顔してる人いません~私の突進如きで腰もやりません~」


 朱音が俺の顔を覗き込みながら俺の腰を手刀で突いて馬鹿にしてくる。

 小学1年生の頃からずっと同じクラスの腐れ縁だけあって煽り方に遠慮がない。突いて、というか殴ってるだろこれもう。


「うるせぇのう~儂はお主と違って運動部じゃないからか弱いんじゃよ~」

「嘘つけ!」

「うぐっ」


 朱音の拳が脇腹に直撃する。


 コイツ……よそ見して避けなかった俺も悪いけど……よし、朱音の頭にチョップをお見舞いしてやろう。


「加減を知れ!」

「いったー! 女の子を叩くなんてサイテー! くらえ朱音キーック!」

「アホか」


 大ぶりの中段蹴りをススっと避ける。よそ見しなきゃこれぐらい避けるのは造作もない。

 そして、勿論確認すべき所はしっかりと確認する。


 ……ッチ。見せパンか。


「避けんな! なんで演劇部のくせにそんな動けるのもうっ! 私バスケ部なのにぃ!」

「やーいやーい、蹴れるもんなら蹴ってみろ~全国レベルの演劇部舐めんな~」

「むきーーー!! さっきはか弱いとか言ってた癖に!!」


 その後もパンチやらキックやらをお見舞いしようとしてくる朱音を避けながら学校に向かっていると、正面から勢いのある自転車が迫って来ていることに気づいた。


 自転車に乗っている男はスマホを見ながら走っていて前を見ていない。

 今は歩行者が先に気づいて道を譲っているから事故を起こしていないが、いつ歩行者とぶつかってもおかしくない状態だ。


 朱音は俺に一発食らわせようとするのに夢中でその自転車に気づいていない。


「だから避け――」

「危ないぞ朱音」

「えっ?」


 俺が朱音を抱き寄せた直後自転車が真横を過ぎていく。

 朱音はこの状況にきょとんとした表情だ。そんなに見つめられたら照れちゃいますよーっと。


「まったく、ちょっとはスピード落とせよなあのチャリ。てかスマホ見てねぇで前見ろや。ただでさえ夏休み明けで気分上がらねぇのに……」


 あー夏休み明け初日とか本当にやる気でないわ。

 朱音は見せパンだし、昨日はゲーム上手くいかないし、見せパンだし、徹夜明けでウザイし、見せパンだし。


「……あ、ありがとう千桜」

「ん? おう。どういたしまして」


 なんてやりとりをしていれば、すぐに高校に到着する。





 キーンコーンカーンコーン。


 予鈴と同時に全員が席について先生を待つ。

 夏休み明け初日だから色々と連絡事項が多いだろう。ちゃんと聞いていないと不都合も多いかも知れない。

 そういう考えでクラスメイト達はいつもより静かに自分の席に座っている。


 俺だって今日ぐらいはちゃんと話を聞くか。


「ふあ~ぁ……ねっむ」


 ……うん、後で朱音に聞けばいっか。同じクラスなんだからこういう時に助けて頂きたいものだ。うんうん。


 連絡事項をしっかりと聞くなんて考えは一瞬で何処かに飛んでいき、仄かに古臭い木の香りがする机に突っ伏す。



 朱音様、後は頼みました。私は先に逝きます。睡眠の世界に。


 なんて。


 窓際の席は窓を開けていれば、頬を軽く撫でる程度の風が入ってきて気持ちが良い。

 俺はその風をゆるりと感じながらうとうと眠るのが好きだ。ここに教師の授業の声が加われば、睡眠用BGMまで用意されて睡眠環境に丁度良い。


 ま、今は流石に真夏だからエアコンで窓開いてないんだけどね。これはこれで涼しいから寝やすくて好きですよ僕は。


「はい皆さんお久しぶりです! お元気でしたかー? じゃあ早速これから……ってなんですかこれは!?」


 俺が眠りの世界に入るタイミングで先生が教室に入ってきた。相変わらず聞き苦しくない高い可愛らしい声だ。


 なんか焦ってるけど……ま、どうせ誰かがなんかやったんだろ。どうせ佐藤とか鈴木あたりだろうし、今俺が優先すべきは睡眠だ。寝よ。


「皆さんどこかに――ッ!」


 今まで聞いた事がない程の先生の焦り声が聞こえた気がした。

 けれどそれは俺の脳に届くことなく、教室に起こっている異変に気づかずに夢の世界へと旅立ってしまった。




 ◆◆  ◆◆




「千桜……千桜ってば!」

「うべっ」


 頬に強い衝撃を感じて意識が覚醒してくる。

 

 いってぇ、朱音か? アイツ叩きやがったな。


 痛みに眉をしかめながら瞳を開けば、朱音が泣きそうな顔をしながら俺のことを見つめていた。

 この朱音の表情は心から怯えている時にしか出ない。どことなく不安そうにも見える。


 こんな朱音の表情を見てしまっては、痛む頬などどうでも良くなる。


「大丈夫か朱音。なんか嫌なことでもあったか? 誰がやった。俺に言ってみろ」

「嫌な事とか誰がとかじゃなくて……この状況が……」


 朱音が瞳に涙をためて俯く。


 誰だ? 誰が朱音にこんな顔をさせたんだ。幼馴染の俺を通してくれなきゃ困りますよお客さん。


 そんな冗談半分憤怒半分くらいの気持ちで周囲に視線を向けると、そこには理解の範疇外の光景が広がっていた。


 空は真っ黒で星や月なんて物は無い。夜空のような黒ではなく、墨汁のような真っ黒な空。

 それだけでも明らかに異常だ。だが、下を見てみれば空と対称的に純白と呼ぶべきレベルの真っ白な地面が地平線までひたすら続いていた。地面以外に木や建物は存在せず、終りが見えない永遠の白が。


 普通ならばそんな空と地面ならば、地平線に黒と白が明確に分かれている部分があるはずだ。なきゃおかしい。

 それなのに、今目の前にある地平線では空の黒と地面の白が混ざって灰色に。なっているのではない。現在進行系で混ざっているのだ。


「境界がない……? 終わりが迫ってる……?」


 誰かが呟いた声が俺の耳に入る。

 俺は意味不明な状況を精一杯理解しようとするが、理解が及ばぬ状況を理解しようとしてより混乱してしまう。そんな不快な状況だ。


「朱音。なんでこんな事に?」

「えっと、その……あの、あのね……!」

「大丈夫だから落ち着け。ゆっくり話してくれ」

「えっと……麻絢まあや先生が教室に入って来たと思ったら、急に地面に変な模様が出てきたの」

「変な模様?」

「うん。その模様に驚いてたら、いつの間にかこの空間に来てた。しかもいつの間にか眠ってたみたいで、私が起きた時は全員倒れてた。それで段々皆が起き出して来たのに、千桜がどこにも居なかったから探したんだよ。そしたら端の方でぐっすり寝てたから叩いて起こしたの。……ごめんね」


 朱音が状況を細かく説明してくれる。

 俺は寝てて全く状況を把握してなかったから助かる。朱音の言う通りざっと見る感じ、周囲には先生含めてクラスメイト全員が居るみたいだった。他のクラスの人とかは居ない。


「んー集団拉致か? いやでも俺らのクラスだけ? それって現実的に可能なのか……?」


 俺は何が起こったのかを考える。

 真っ先に思いついたのはドッキリだが、今口に出したように高校生全員を眠らせて拉致るなんて可能なのだろうか。クラスメイト全員が仕掛け人で、俺だけがターゲットという説も無くは無いか。

 だとしても、昨今のテレビ番組で一般人にこんな事したら炎上物じゃないか?


 となると、後は夢orガチの拉致の2択だ。

 夢だったら考えるだけ無駄だが、ガチの拉致だったら白昼堂々この人数を拉致してたらバレるに決まっている。それに他のクラスの生徒とか先生をどう凌ぐんだって話だ。


 そうなるとやっぱりテレビのドッキリの線が濃厚なのか? いやでもなぁ……。




 俺がそんな考察をしていると、段々と騒がしくなってきた。ちらほら寝ていたクラスメイト達も全員が起きたようだ。


 俺がそう考えた瞬間――真っ黒の空にヒビが入り、血の様に鮮やかで濃い赤月が顔を覗かせた。


「お、おい! なんだあれ!」

「なんか空割れてるんだけど!」

「なにこれ撮影!? どこなのよここ!」


 現実ではありえない光景を目にしたクラスメイト達は次々に赤月を指差して騒ぎ出し、今にもパニックを起こしそうな状態に陥る。

 中にはスマホを出して動画を撮ろうとした者も居たようだけど、どうやらスマホが使えないみたいでまたもや騒ぎが大きくなる。

 

「千桜……怖い……」

「大丈夫だ朱音。俺が一緒にいるから安心しろ」


 俺は根拠のない励ましの言葉を朱音に言い、朱音が握ってきた手を強く握り返す。それだけでも朱音はいくらか落ち着いてくれる。


 最悪クラスメイトを見捨ててでも朱音は助けるぞ。



 誰もが不安そうに赤い月を見つめている中、俺は急に強い気配を背後に感じた。まるで大量の虫が背中を這いずり回っているかのような不快感だ。


 その不快感を取り除きたくて勢いよく振り返り、朱音を背後に隠すように前に出る。


「ほぉ、お主が一番か」

「え?」


 振り向いたら、そこには白髪の女の子が立っていた。小さくて線の細い女の子が。

 見た目は小学校3年生くらい。幼い顔つきの中に神秘さを感じさせ、1本1本が細い白髪がゆらゆらと揺れて儚さを演出している。着ている服は真っ白な無地のワンピースで、それすらもが神聖さを醸し出している材料だと感じる。


「やぁやぁお主達、良くやって来てくれた。我の招待に応じてくれて非常に助かるぞ」


 幼女は年を取った老人のような話し方をする。その見た目と話し方のギャップに、全員が呆気にとられて言葉が出ない。

 それをこいつは無視されたと捉えたみたいだ。


「無視は良くないのう。年配者には敬意を払うものじゃ。ほれ、敬意を払わねば殺すぞ?」


 幼女はそう言うと、何処かに狙いを定めて右手を振り下ろした。

 かるーく空を切る感じで。


「すぱん、じゃ」

「ぐぁあぁぁぁあぁあ!!」

 

 幼女が手を振り下ろした先、そこにはクラスでお調子者だと言われている佐藤が立っていた。

 いつも元気で、たまにウザく感じるけど悪い奴じゃない。誰にでも分け隔てなく接するし、クラスのムードメーカー的存在だ。


 そんな彼が叫びながらのたうち回っている。


 よく見れば右腕が無い。右肩から先を抑えて転がり回っているのだ。彼が転がっている地面には、彼から離れた右腕が転がっていて……。


「腕を消し飛ばした……?」

「う、嘘……」


 佐藤の状況を理解したクラスメイト達が絶叫する。ある者は泣き出し、ある者は無表情に立ちすくむ。

 誰しもが目の前にいる幼女に恐怖を感じた。下手に逆らったら一瞬で殺されるという恐怖。それは今までの人生で感じたことのないレベルのものだ。


 クラスメイト達は完全にパニック状態に陥る。


「皆さん落ち着いて下さい! 大丈夫ですから!」


 先生はそんな状況を見てクラスメイト達を宥めようと頑張っていた。自分の怖くて顔を青褪めさせているというのに強い人だ。

 だがその努力も圧倒的に無意味だった。ここまでの恐怖を感じてパニックになってしまっては誰にも止められない。


「うるさいよ、敬意は?」


 こいつ以外には。



 全員が一瞬で静まり返る。

 それどころか指先の微細な動きすら止めて、世界の時が止まったのでは無いかと錯覚する程に見事な統制を見せる。


「おぉ凄いね! やれば出来るじゃないか! すぐに静かになれたね! じゃあ改めて挨拶するよ。僕はミロカエル。まぁ天使みたなものだと思ってくれて良いよ」


 ミロカエルと名乗った幼女は、心底楽しそうにニコニコしながら俺達の事を見渡す。話し方もいつの間にか変わっていて、余計に怖い。


「君たちは僕が招待しました。ちょっととある世界に行って欲しいんだよね。女神様に頼まれたんだけど適任者が全然居なくてさぁ。じゃあもういっその事、特別が多い学生を適当にいっぱい送っちゃおうって思ったんだ!」


 ミロカエルが両手の指先を合わせて、ぶりっ子がするような可愛らしいポーズをしながら言う。今更そんなポーズしても可愛いなんて思えない。ただただ怖いだけだ。


 朱音も怖くてずっと俺の手を握っている。

 そりゃそうだ。俺だって怖い。


「良いよね? ね?」


 ミロカエルが首を傾げて俺達に問う。

 ミロカエルの見開いた瞳の奥には光が見えない。壊れた人形や、命が宿らない機械の様な無機質さの中に、生体特有の感情が見え隠れしている。非常に歪で嫌悪感を抱かせる瞳だ。


 恐怖と心の底から湧き上がる不快感で、誰もが口を開けない。開きたいが言うことを聞かない。


「あれぇ? ……すぱん!」

「うぐぅあぁぁあああ!!!!」


 またもや空を斬る動きをしたミロカエルによって、今度は鈴木の左脚が吹き飛ぶ。それにミロカエルがなにかやったのだろう。

 派手に血しぶきが舞い、隣りに居た女子生徒の手に鈴木の左脚が飛んだ。女子生徒は自分の手にある生脚に声も出ず、膝を震わせながら地面にへたり込んだ。

 

「敬意が足りないなぁ……悲しいなぁ」


 誰もが恐怖と混乱で答えられずにいると、またもやミロカエルが手を上に挙げた。それを見て誰かの短い悲鳴が響く。


 このままではまた誰かの腕が飛ぶ。下手したら朱音が……それだけは駄目だ。


「ミ、ミロカエル。その世界はどんな世界なんだ? それを知らなくちゃ良いも悪いも言えないだろう?」


 俺は震える声を出来るだけ隠してミロカエルに問う。

 俺や他のクラスメイトならまだしも朱音を殺させる訳にはいかない。誰かが返事をしなくちゃいけないなら俺がする。


「敬語は? 敬意が足りてない……って言う所なんだけど、君なら良いよ。最初に気づいたもんね」


 ミロカエルは錆びたブリキの様な動きと凍るような真顔で俺の方を見たかと思えば、声を発したのが俺だと気づいた途端に笑顔になった。


 危ねぇ……恐怖で敬語を忘れてた。下手したら俺ごと朱音も殺されるところだったぞ。しっかりしろ俺!

 

 クラスメイト達も静かに息を吐いている。俺同様にミロカエルの冷たい表情を見て緊張したのだろう。


「君たちが行く世界はねぇ……君たちの世界で言うアニメの異世界みたいな感じだよ。魔物が居て、魔法がある。人類が居て獣人とかエルフとかもいる。文明レベルは地球に劣るけれど、魔法がある分、更に個人の権力が強大になっている。そんな世界だよ」

「つまり、死にやすいって事だよな……?」

「そうだよ! 君は理解が早くて助かるよぉ! 人間なんてコロコロ死んでポンポン生まれてくる世界だからね! 命の重さが地球の何十倍何百倍も軽いよ!」


 ミロカエルが無邪気な子どものように破顔してそう言う。楽しそうに手も叩いて機嫌が良さそうだ。


「そうか……でも俺達はさっきまで安全な地球に居たただの高校生だ。そんな危ない世界で生きていけるとは思えない。俺達だって死ぬのが分かってる世界には行きたくない」


 俺はきっぱりとミロカエルに言う。目を見て堂々と意見を通す。


 今までのやり取りからしてミロカエルは俺に甘いのが明確だ。

 それなら、朱音のためにもどうにか地球に戻して貰うか、最悪でも何か強い能力を貰いたい。その為には多少の危険を犯してでも交渉する価値がある。


「もー本当に君は凄いなぁ! 勿論君たちには力を授けるよ! ってそんな事は置いといてさぁ……どうどう? 僕の下で天使として働かない? ……って駄目だよねぇ、神様に怒られちゃうよ」

「は、ははは。光栄なお誘いだけど、ミロカエルが神様に怒られちゃうなら駄目だな。俺もクラスメイトの皆と一緒に行くよ」


 俺はミロカエルの口から出た神様という言葉を使ってミロカエルの誘いを断る。

 そして、その言葉を発してすぐにミスってしまったということに気が付いた。


 『皆と一緒に行く』

 

 そう言ってしまったら、もう地球に戻る気は無いみたいに受け取られてしまう。まるで能力を貰って異世界に行くと了承したみたいに。


 俺がそう気づいた時にはもう手遅れだった。ミロカエルがにこりと笑ってくるりと回った。


「よーし! じゃあ皆に力を授けよう! 時間をあげるから各々決めてね! ばいばーい!」


 ミロカエルは話が早いとばかりに捲し立て、ササッと手を振って赤月に向かって飛んでいってしまった。真っ白の翼を羽ばたかせ、俺達の知る天使のような見た目をして。




 こうして、俺達1年3組の異世界転移が決まってしまった。

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