第8話 王都脱出
僕は一般的な冒険者風の服装に着替えた。
騎士のローブなど直ぐに目を付けられてしまう。
それでも腰にはショートソード一振りに革製のバックパックには少し多めに二週間分の食料を詰め込んだ。
灰色の猫はいつの間にかバックパックの上によじ登るとそこで小さく丸まっていた。
お祖父ちゃんの話から外に見張りがいるかも知れない。
二階の窓から外に出て慎重に屋根伝いに城門付近の壁に向かって進む。
空に浮かぶ月だけが薄目で僕らの姿を見下ろしていた。
新月の夜陰に紛れて地上に降りる。
更に城壁の中で唯一崩れたまま放置されている場所から手探りで足場を探してよじ登った。
この場所だけが一部が崩落していて他の城壁に比べて高さが半分以下なのだ。
城壁の上に手が掛るとバックパックの上でノンビリしていた灰色の猫は僕の頭を飛び越えてしなやかに着地した。
(薄暗がりで高さを心配してたけど、あの調子なら僕もいけるかな?)
先にバックパックを放り投げると、それに続いて僕も城外へと飛び出した。
「痛ったたたたた……」
降りた瞬間に盛大に尻もちを衝いてしまったが幸い怪我はしなかったようだ。
(下っ手くそな着地じゃのう)
フッと声が聞こえた気がしたが辺りに誰も居ない。
僕は城門から少し離れたところから街道に合流した。
朝日が昇ると暫らくして、王都を起点に荷馬車が行き交うようになった。
数台の荷馬車が過ぎ去ると、再び頭の中に声が届いた。
(うむ、主様よ。どうやら次の馬車が良さそうじゃな)
僕はビックリして背中を振り返ると、そこにはバックバックに這い上ってた灰色の猫が上手にウインクして見せた。
僕は猫のウインクを初めて見た。
取り敢えず次に来た馬車をヒッチハイク風に止めると年老いた年季の入った商人が手綱を握っていた。
見たところ荷台にも空きスペースが見受けられる。
僕は老商人に訊いてみた。
「すみません。王都を出た冒険者ですが、この馬車ってどこに向かってるんですか? あまり持ち合わせは無いのですが馬車に乗せて貰ってもいいですか?」
老商人は僕を一瞥すると穏やかな笑顔と共に、手にはお金のマークを作って答えてくれた。
「儂はここから十日ほど離れたトルドの町まで行くぞ。あの町にも冒険者ギルドも有るから仕事にも困らんじゃろう。銀貨二枚なら乗せてやっても良いぞ」
ちょうど叔母さんが住んでる町がトルドだった。
「それではお願いします」
僕はお辞儀しながら、ポケットから銀貨二枚を取り出した。
お祖父ちゃんからの言付けで、こういう時に革袋なんて取り出さなくてよいようにある程度のお金は分散して持ち歩いていた。
そして取引が終了すると荷台の上に腰を下ろした。
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