第65話

そのまま彼は俺の身体を寝台へと移動させる。

「手当てをし直しましょう。シャツも変えたほうがいい」

「ラスティ」

俺のシャツの片袖を脱がせて彼は肘の包帯をとき、血止めをきっちり施すとその上から新しい包帯を巻き直す。

「手当てをしたのはヴィットリオ様ですか?」

「ああ」

「手当てが上手だ」

「せっかくの手当てを台無しにしてしまったけれどな」

力なく俺は苦笑する。

包帯を巻き終わると、ラスティの差し出す新しいシャツに着替え、そのまま横になる。

じわじわと疲労感が襲い、眼をつぶる。

ラスティが俺に上掛けをかけ、立ち去る気配を感じ、眼を閉じたまま、俺は彼の背に声をかける。

「ラスティ」

「はい」

「辛い役目になった。すまない」

「若、」

「大丈夫だ」

恐らく彼は他の手足に報告させるのを良しとせず、自分がその役を負ったのだろう。俺がどうなるかも知った上で。

「また世話をかけるかも知れないが。…父上に伝令に出すのは他の者でいい。お前はこの屋敷で待機してくれ」

「…承知」

穏やかな声が遠ざかっていくのと同時に俺の意識も遠くなる。

あまりにも多くの事が起こりすぎ、影としての俺ではなく、一人の人間としての俺の感情の許容範囲はとっくに過ぎていた。

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