第2話 丸投げおとん

私の母が十数年前に亡くなった時のこと


癌を患っていた母が息を引き取った

私は自分が思うよりずっとショックを受け、病院でひたすら泣いていた

そんなに仲良し親子ではなかったが、やはり母親と言うのは私の中で大きな存在だったのだ・・


と悲しみに浸っているのも束の間、現実は非情なもので病院から、◯時までには病院を出てもらわないといけませんので葬儀屋さんに早急に連絡してくださいとの通告!


え!親が亡くなったと言うのにそんな情け容赦ない言葉・・

しかも予想外に早く亡くなったものだから何の準備もできていない!

父と私と姉はオロオロしながらとにかく葬儀屋さんを探した

ひとまず見つかりほっとしたが、そこから短時間でいろいろ決めていかないといけないことが山ほどある

喪主は父になるので、葬儀屋さんはもちろん、私と姉も父に、これはどうする?アレは?等と聞いてみたが、父からの返答は

「ワカラン・・」(関西弁)

何を聞いても

「ワカラン・・」


父も、不仲だったとは言え何十年も連れ添った妻が亡くなり、これから一人で生活していかないといけないと言う現実に直面して悲しみと動揺で何も考えられない状態なのだろう

それは痛いほどわかるが、今はとにかくサクサク決めていかないといけないのだ

わからんとか言ってる場合か!

と思ったが、余りに呆然自失となっているので仕方なく私と姉で段取りを進めた

その後も親戚や知人への連絡、お金関係など悲しみも吹っ飛ぶほどやる事に追われ、私と姉はてんやわんやだったが、父は相変わらず「ワカラン・・」を連呼し、ただ人形のように座っていた

しまいに私もイラッとして

「お前はそれしか日本語知らんのか!」

と頭を張っ倒しそうになった

が、ぐっと堪えた

さすがに親の頭を張っ倒すのはマズい

結局父は何も決定せず私と姉で全て段取りした


いやはや、まさか父がここまで頼りにならないとは・・

よくよく思い返せば、私たち姉妹の世話やお金のこと、家事などは全て母がこなしていた

そう言えば父は、毎日の仕事と、休みの日はフラフラと出かけるようなそんなイメージしかない

なんということ!

あまりに母任せで父自身は家のことは何もわからず何もせずに今まで来たのだ


家の事は母に丸投げ、母がいなければ娘たちに丸投げ

丸投げおとんなのだ(至って本人に悪気はないようだが)

ある意味初めて知った父の一面に、まあまあな衝撃を受けた30代半ばの娘であった



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