第28話
私が覚悟を決めて
歩き出すと
一斉に声がしてきた
政樹『好きだよ』
政樹『オレには
お前しかいないんだ』
政樹『愛してる』
幾重にも
連なって聞こえてくる
愛しい声
みんな甘い誘惑の声
でもみんな違う
政樹はこんな軽々しく
言ったりはしなかった
優しく肩を抱いてくれるだけで
わかった
政樹の想いが――
照れ屋の政樹が
私の目を真っ直ぐ見つめて
言えるはずない
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