1章

始業式

第1話

今時の高校生といえば、カラオケが遊び場なのだろう。


教室で“今日カラオケ行かない?”などとよく聞くし、誘われる。




歌うのはあまり好きではないが、カラオケ自体は嫌いではない。


かといって好きでもない。



簡単に言えば、“どうでもいい”なのだ。





証明が照らされている薄暗い個室の中。



音楽とマイクからの歌声が個室中に響き渡る。


歌っている男の歌声を苛々しながら聞いていた。




「奈波ー」



騒音のため耳元で声を張り、呼ばれる。


「なに」


「だからごめんってー。そんな怒んないでよ」


「怒ってない」


「ほらその言い方。怒ってる」


「怒ってない」



そう言って友人である亜紀は「まだ言うかこの口はー!」と私の頬を引っ張る。


「いひゃい!いひゃい!いひゃい!」


手を払いのければ、亜紀は歯を見せて意地悪く笑った。


軽く睨みテーブルにあるグラスを手に取る。



「合コンならそう言ってよ。なにも黙ってることないじゃん」


ストローに口をつけた私に「じゃぁ言ったら奈波来てくれた?」と聞き返す。


「行かない」


「ほら。だから黙ってたの」


「連れてこなかったらよかったんじゃないの?」


「それはダメ。人数足りないから」


「マネキンでも座らせとけばよかったのに」


「や、絶対バレるっしょ」

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