第29話【雪を待つ】ト【風邪】
とても寒い日、幼い頃あたしはよくベランダから庭に出ては
幼少期の萌香「きょう、ふる?」
幼い萌香の問いに遊びに来ていた萌香の母親の友達、
英里「う〜ん。寒いから降るかもね」
幼少期の萌香「ちゃっくさん、ふるかな?」
個人差によるが、2〜3歳頃は言葉の意味も少しずつ理解し、自分の感情を簡単な言葉で表せるようになる。例えば『楽しい』、『いやだ』、『おはよう』、『ありがとう』など他人とのコミュニケーション力が身につく時期でもあるのだが、言葉の発音も同じで人によって言いやすい、言い難いのもある。幼い萌香の場合は【た】という言葉の発音が上手く言えなくて【ちゃ】っと発音していた。他にも【し】を【ち】と言ったり——。
成長すれば自然と発音もスムーズになっていくので、この時期に無理やり言い直させなくても特に問題視する必要性もない。むしろ英里はこの舌っ足らずさが可愛いと思ってしまう。
英里「降ったら萌香は嬉しい?」
幼少期の萌香「うん!」
英里「あたしは微妙だなぁ」
幼少期の萌香「どうちて?」
英里「仕事に行けなくなるから……」
すると買い物から帰って来た萌香の母親が庭までやって来た。
萌香の母親「英里。子守させてごめんね。すごく助かったよ、ありがとう」
英里「いいえ」
空から白くて丸い冷たいものが落ちてくる。
萌香の母親「あ!?降って来たね、萌香〜。寒いからお家の中入ろう〜」
母親の呼びかけに答えベランダから家に入る。そう、萌香の待っていたのは“雪“だったのです。
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今日はとても楽しみしていたイルミネーションの日。夜からだというのに朝からクローゼットの前でそわそわしている。
萌香「どうしょう〜。どんな服着て行こうかな」
すると、机の上に置いていた携帯からピロロン♪という着信音が鳴った。携帯を手に取り画面を見る。
委員長『
2人から突然のキャンセルメッセージを読み、そわそわから一気にずーんと心が沈んでしまった。たけど2人だって楽しみにしていたはずだとポジティブに思考を切り替え萌香は2人に
『分かった。お大事に』
という返信を返した。
昼過ぎ、大神に2人の事を連絡しようとメールを作成していると大神から突然の電話の着信が来た。萌香は一瞬ドキッとして携帯を手から離してしまい床に落としてしまった。
萌香「あっ!?は、早く出なくちゃ」
鳴り続ける着信音。震える手で床から携帯を拾い電話に出る。
萌香「は、はい。もしもし」
大神『あ、やっと出てくれた。今日のイルミネーションの件なんやけど……。悪いんやけど延期にしても
大神の声は聞こえている。しかし、話が全然頭に入ってこない。【延期】という言葉が聞こえた辺りから——。
萌香は、携帯画面に表示された受話器を切るアイコンをタップして電話を一方的に切った。切る間際まで大神は『もしもし』と言い続けていた。
数分後大神から延期にしてしまった謝罪のメールが届く。夜、T Vを観ながら晩御飯を食べていると緊急放送が流れた。
T Vアナウンサー『昨日から季節外れのインフルエンザが流行しています。風邪のような症状が続く、または高熱が続く場合は個人で判断せず病院で診察を受診するようにして下さい』
萌香の母親「萌香も気をつけてね」
萌香「……うん」
萌香は食べ終えた食器を流し台へ置き自室に向かい、大神からのメールを返すのだった。
29話End
お題【雪を待つ】24‘12/16
【風邪】24‘12/17
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