第23話【さよならは言わないで】ト【夢と現実】
幼い頃から父親の仕事の都合で何度も引越しや転校が多かった。
小学校2年生の春、母親が嬉しそうに私達
母親「お父さんの仕事、今度は長期滞在かも知れないわ」
母親「本当よ。お父さんを信じてあげて」
この当時兄は中学1年生になったばかりで、反抗期真っ只中だ。
源星「そう言って、何度も俺らを裏切って来たじゃねぇか!?あのクソ親父は!!」
源星は走って玄関に向かう。母親の引き止める声も兄には届かずドアを開け、そのまま外へ出て行った。真珠星はその場で泣き崩れる母親を横目に兄の後を追いかけた。兄はすぐに見つかった。アパートの目の前にある。砂場とブランコしかない小さな公園のブランコに座っていた。真珠星はそっと隣に立って兄の顔を覗き込むようにして声を掛けた。
真珠星「お兄ちゃん、み〜つけた!」
真珠星の満面の笑顔を見た源星は、心の中でずっと押さえていた気持ちが溢れ、言葉にならない声を押し殺して泣いてしまったのだ。
源星「……うぅっ」
兄の泣き顔を初めて見た真珠星は、後ろに回りぎゅっと抱きしめ優しい声で話す。
真珠星「次、転校する時は『さよならは言わないで、また会おう』ってクラスの皆んな言って別れよう」
泣いて気持ちが落ち着いたのか、鼻水をずるずると啜りながら
源星「あ“あ“……そうだな」
真珠星は兄が元気を取り戻したと理解し、勢いよくブランコを後ろから押した。そして——。
真珠星「家(アパートの部屋)まで競争〜」
と言って急に走り出した。負けるまいとブランコから降りた源星は真珠星を追いかけて行くのだった。
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夏期補習1日めが終わって、家に帰って来た萌香。自室に向かわずリビングに入り置いてある、ソファベットの上で横になり夏の暑い日差しにやられた体を冷房で冷やしていた。
萌香「あつ〜い、お腹空いた〜」
と言ってもお手伝いさんや、執事がいるわけでもましてや未来の猫型ロボットなんて現実にはいるわけがないので、すぐに美味しい食事がテーブルの上に用意されることはない。それでも、冷蔵庫には母親が今朝作ってくれたお弁当がある。萌香は気怠い体を起こしてお弁当を取りに、冷蔵庫向かい取り出す。
そして電子レンジという素晴らし家電製品に感謝しつつタイマーをセットし温めボタンを押した。
萌香はレンジの中央でクルクルと丸いお盆の上で時計回りに回るお弁当箱を眺めながら呟く。
萌香「電子レンジって人の夢と希望が現実になった機械だよね。これを最初に発明した人は天才だなぁ」
萌香の言ったことは電子レンジに限ったことではない。この場に
『いや、それ以外にももっとあるだろう!?』
23話End
お題【さよならは言わないで】24‘12/4
【夢と現実】24‘12/5
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