第25話 水瀬愛理の想いは一方通行です ACT3

自意識過剰? 深く考えすぎ……これは嫉妬? なの?


それにさ、私の告白なんか先輩軽く流しちゃった感満載なんだけど!

私と付き合ってください!


て、私はっきりと言ったんだけど。その返事返ってきていないんですけど……。もしかして聞こえていなかった先輩?


あのぉお返事ください!


愛理は待っています。……先輩からの返事を。

て、いくら思っても先輩はなんの変化もない。もう本当にどうなっているんですか?

それにさ、繭ちゃん先輩とくっつきすぎじゃない?


本当に何にもないのこの子と? 本当はあるんじゃない? それが口に出せないだけで、ああああああああ! いけないなんかいけないことを想像してしまう自分が、自分に腹が立つ。


今ここで問いただしちゃう? でも昨日もあんだけごたごたしていたのに今私がその事問いただしちゃうとまた雰囲気悪くなっちゃうんじゃない?

いったいどうしたらいいんだろう。


「なぁ水瀬」

「は、はい」

「もう昼だ、なんか食っていかないか?」

「そ、そうですねぇ。お店入りますか?」


 私は先輩の提案に賛成すると、一緒に歩き出した。

ああもう……今はとりあえず先輩の行きたいところに付き合おう!  それで気持ちを紛らわせようそうしよう!  よし頑張るぞ私!!  私は心の中で気合を入れると前を歩く先輩の後をついていったのだった。


「あのぉ……」


あ~もう気になるよぉ~! なんでこの子はこんなに先輩にべったりなの? もうさ本当にありえないくらい近いんですけど! 私も近づいていきたいけどなんとなく二人の関係がよくわからないから近づけない。


「そこのファミレスでいいか?」

「ええ、大丈夫です」


すると繭ちゃんが先輩につんつんして「私先に帰ってるよ」と言うのだ。

「どうした食っていかないのか?」

「……うん、そんなにおなかすいていないし……あのね……お金……足りない」

下を俯きながら言う彼女の姿を目にして、なんかこの子思っていたより素直な子じゃないかなんて思ってしまう。


「なんだそんなことか。今日は俺のおごりだ」

「悪いよ。映画も出してもらったのに」 

「気にするな」

先輩の言葉に繭ちゃんは笑顔になり、嬉しそうに頷いた。


ああもう本当にこの二人ってどうなってるのぉ~!  私は心の中で叫びながら二人の後を追ったのだった。

ファミレスに入り各々注文を済ませると、先輩は「俺トイレ」と席を立った。

先輩がトイレに向かうと繭ちゃんはにまっとしながら私に言うのだ。


「ねぇ、水瀬さんて山田さんの事好きなんでしょ」

「な、なにを!」

いきなり言われて動揺する私。


な、なんでいきなり言うのこの子!

「見てればわかるよ。だって私と同じ目をしてるもん。私も山田さんが好きなんだ」

繭ちゃんの言葉に私は思わず息を飲む。


同じ目?  同じ目ってなに?  繭ちゃんは私の目を見ると「ふふふっ」と笑い出したのだ。

「ねぇ水瀬さん、私と手を組まない?  私ね、山田さんと付き合いたいの」

「え?」

なんでいきなりそんな展開に? 私は繭ちゃんの言っている意味が分からずにただ呆然とする。


「私ね、山田さんが好き。だから付き合いたいの」

「そ、それは……」

「水瀬さんも同じでしょ?  だったら手を組もうよ」


なんでいきなりそんな展開になるの? 私は繭ちゃんの言葉に動揺が隠せず、ただ黙って彼女を見る事しか出来なかったのだ。


そんな私の気持ちも知らずに繭ちゃんは話を続ける。

「私はずっと山田さんが好きだった。だから水瀬さんの気持ちも分かるの」

「……繭ちゃん」


そう、私もずっと先輩が好きだった。でも先輩は私の事を後輩としか見ていなかった。それが悲しかったし辛かったけど、だけど今は違う!  私は今先輩と一緒にいて幸せなんだ!  だから繭ちゃんの気持ちはわかるけど……でも……。


「ねぇ水瀬さん、私と手を組もうよ。そうすればきっとうまくいくよ!」

「え?  あ……」

私は繭ちゃんの言葉に思わず動揺してしまう。


「ね、水瀬さん」

「で、でも……」

「ねぇ、私協力するよ。だって水瀬さんと私同じ気持ちだもん。それに……山田さんの事好きなんでしょ?  だったらさ協力し合おうよ」


繭ちゃんは私の目をまっすぐ見て言うのだ。その目は本当に真剣だった。

私はそんな繭ちゃんの目を見ると何も言えなくなってしまったのだ。


「ね、水瀬さんお願い」

繭ちゃんはそう言うと手を合わせてお願いのポーズをする。


そんな繭ちゃんを見て私は……。

「わ、わかった」

そう答えたのだった。


私は先輩が好き!  だから……だから……協力する!

「ありがとう水瀬さん!」

繭ちゃんは嬉しそうに私に言うのだ。その笑顔はなんだかとても可愛く見えたのだった。


ああ、私なんであんな事言ったんだろう。なんであんな可愛い子に手を組もうなんて言ってしまったんだろう? でも、だって仕方ないじゃない?  だって……。


『ねぇ水瀬さん、私と手を組もうよ』

あの言葉が頭にこびりついて離れないんだ。


私は先輩が好きだ!  だから繭ちゃんの気持ちもわかる。

それに私も先輩と付き合いたい!  でも、だからってこんな形で付き合うなんて……本当にいいの?


「どうした?  そんな暗い顔して」

ああ、先輩が戻ってきた。どうしよう私今どんな顔してるんだろう。きっとひどい顔をしているに違いない。だってさっきからずっと下ばかり見ているから。


「なんだ?  俺なんかしたか?」

ああ、先輩違うんです。先輩になんも落ち度なんてないですから!

「水瀬さんどうしたんだろうね」

繭ちゃんはそう私に言うと、にこっと微笑んできた。


私はその笑顔を見て思わずドキッとする。だって……本当に可愛いんだもんこの子。

でも……でもさ、なんでこんなにいい子が先輩の事好きになったんだろう?  私なら絶対先輩よりいい人見つけるのになぁなんて思ったりして。ああもう!  まただ! 私なんであんな事思ったんだろう。なんかもう、自分で自分が嫌になる。


「なぁ水瀬」

先輩はそう言うと私の顔を覗き込んできたのだ。


ああ先輩近い!  もうこんな近くにいるとキスしたくなっちゃうじゃないですか!  ああもう!  なんでまた私はそんな事を考えてしまうんだぁ!  やっぱり私はどうかしているに違いないよぉぉ~!!  ああもう本当に頭の中ぐちゃぐちゃだよぉ~!


「大丈夫か?  なんだか元気がないみたいだけど?」

「い、いえ大丈夫ですから!」

私は思わず大きな声を出してしまう。


ああもう!  本当に私ったらなにやってんのぉ~!!

「ならいいが、もし何か心配事や悩み事があるのならいつでも言ってくれよ」

先輩はそう言うと心配そうに私の頭を撫でてくれたのだ。


ああもうまた先輩!  そんな優しくされたらますます好きになっちゃいますってばぁ~!  もう私はただ黙ってコクリと頷くことしか出来ないのであった。



あ~もうなんでこんなに好きなんだろう?  でも……なんでかな?  先輩といるとすごく落ち着くしなんだか心が暖かくなるのは。

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