第22話 山田はこの修羅場をどう乗り切るのか? ACT3

さすがにこれだけの人がいると私の部屋より広いとは言え、人口密度キツキツですねぇ。


ええっと、最初に来たのが長野さんて言う人。そして次に押しかけてきたのが山田さんお会社の上司? 部長って言っていたからそうなんだろうね。でもものすごい積極的な人なんだねぇ。


そんでもってお次があの時駅で会った会社の人なんだろうね。


なんだ全員会社関係なんだ。意外と山田さんて狭い人間関係の中で暮らしているんだね。まぁそこはどうでもいいんだけど。でもさぁ、なんかものすごく今の状況山田さんにはピンチなのかなぁ。


だってなんか修羅場ってそうだし。


私の自己紹介まだしてないからちょっとはした方がいいよね。それにこの状況じゃなぁ~。


ああ、どうしよう……山田さんなんて言おうか困っているみたいだねぇ。ああもうっ!  だめだよみんなピリピリしちゃあさぁ、ここは私が勇気を出して……。


すると山田さんが私を見て言うのだ。


長野さんと部長さんの二人に腕をつかまれながらだ。

そして私に言うのだった。

その山田さんの目を見て私は思ったんだ。

ああ、これは私がでしゃばる所じゃないなとね。


だってその目は私に何も言うなと言っているようだったか

ら……。

だから私はただ黙って見ていることにしたんだけど。

でもこの状況はさすがにまずいよね? だってみんななんか怖い顔をしているんだもん。


みんな目が血走っているんだよ!


でもさぁよくもまぁこんなに集まるもんだよねぇ、やっぱこれは山田さんの人徳なのかなぁ。だとしたら会社では結構人気者だったりして。


そんな人に私は今凄い興味を示している。

ここに集まったみんなも同じなのかもしれないけど。


そんでもッテさらにややこしいことになってしまったのは水瀬さんが私の事を山田さんの従妹だといったことだ。


まぁあの時山田さんは水瀬さんに従妹だと言っていたからそう言われても仕方がないのだけど、そこに敏感に引っかかる長野さん。

別にいいんじゃないのかなぁ。そんなに大事にすることかなぁ。


私はただ山田さんと一緒にいるだけだよ! それのどこがいけないんだよね。

「なぁ山田、お前水瀬さんにそう言う嘘まで言ってこの子と関係を持ちたいというのか?」


「だから俺と繭とはそう言う関係じゃないって」

「じゃぁどういう関係なんだ?」


ああ、山田さんもうやばいかも……眉間のしわがものすごく深くなっている。そろそろプッチンきそうだよね。


そして山田さんは「もういい!」と言ってその場にあぐらをかいて座り込んだ。

「長野お前も座れ!」

「あ、うん」と言われるままに長野さんはその場に座った。部長さんも水瀬さんも合わせるようにその場に腰を落とした。


私も座ろうとしたけど、さすがに場所がない。そのまま、キッチンへ移動してダイニングテーブルの椅子に腰かけた。


ついに山田さんが切れたのか? それとももう開き直ったのか? まぁ私にしてみればどっちでもいいんだけど……て、元凶はこの私か!


「あのなぁ長野。俺と繭とは一切やましい関係じゃない! これだけは言っておく!」

「お、おう、そうなんだ」やっぱ山田さん切れてるんだ。なんか今度は長野さんの方がおされちゃっているよ。


「ちゃんと説明するから。俺と繭とは……」山田さんは私とのいきさつを語り始めた。まぁ確かに私も少し? 強引なところがあったかもしれないけど、これでみんな納得してくれるといいんだけどね。そう、私と山田さんはお互いの足りないところを補うということで成り立っている……成り立たせようとしている関係だということを。


出会いはどうであれ、お隣であると言いうことでのことでこの関係が成立するのだということを。


「じゃぁ先輩は繭さんにそう言う気持ちはないということですか?」

「そうだ! ない!」


「……そうなんですか」と言いながら、水瀬さんお肩がふっと落ちたような感じがした。何? もしかして水瀬さんて山田さんの事先輩と呼びながら実は好きなの?

なんかそう言う感じしか伝わってこないんだけど。


まぁこの部長さんはさておき、水瀬さんて意外とわかりやすいよね。


でもそんなことこの場では口が裂けてもいえないけど。

すると部長さんが私に話しかけてくる。


「ねぇ繭ちゃん、あなたはそれでいいの?」

私はそれにすかさず答えたんだ。それは自分でもビックリするくらい大きな声で……。


「はい!  いいもなにも山田さんとはそう言う関係ではありませんから!」

「そう……」と部長さんは私をじっと見ているんだけど、その目がなんか怖いんですけど……。


そして水瀬さんもまたそんな目で私をじーっと見てくるし……もうなんなのよ!

「じゃぁ山田君は一体どういうつもりだったの?」と部長さんが聞く。

すると山田さんは言ったんだ。


「俺と繭はお互い足りないところを補うために一緒にいるんですよ」とね。


ああ~言っちゃったよこの人言っちゃたよ……まぁそうなんだろうけどさぁ、でもいいのかなぁ?  こんなこと言ってしまって……それにこうなっちゃったら後戻りできないと思うんだけどな。

 

そして水瀬さんなんかショック受けているよね絶対に。だって何かさっきよりも肩が下がっているようだもん。


「じゃぁ繭さん、あなたお料理はできるのかしら?」と部長さんは私に言う。

「あ、はい私は料理全般できます! 料理は得意です」

「そうなんだ。いいなぁ。私なんかお料理出来ないから山田君緒胃袋つかめないよねぇ」


「わ、私も料理くらい……できます」

ぼっそりと水瀬さんが下を俯きながら言った。


「先輩の食事の世話くらいなら私も出来ます。……私の住んでいるマンションここからすぐ近くなんですもの、お味噌汁が冷めないところなんです……だから」

へぇそうなんだ、この人意外と近くに住んでいたんだ。


でもそれって……。

「それだったら山田君にご飯作ってあげられるよねぇ」と部長さんは意地悪そうな笑みで言う。


「……出来ます」

「じゃぁ僕も」と水瀬さんの言葉にかぶせるようにして、長野さんが言葉を発したのだ。そして続けて言ったのだった。


「僕もできるよ料理なら……」

いや、そうなんだ。でもさぁ長野さんそこは対抗心燃やさないでよぉ!


さすがに山田さんも苦笑いをしていた。


「ま、でも山田君と繭ちゃんの関係は私達の思い過ごしのようなところもあったということなんでしょうね。……でもね、だからと言って私は山田君のことをあきらめたわけじゃないんだけどね。いいのよ、私言っていたわよね。あなたに彼女がいたって関係ないわよって。会社ではそうはいかないけど、プライベートなら私はあなたの傍にいたい。……そうなのよ、それが私の素直な気持ちなの」


と部長さんは何か意味深な言葉を言う。

「そ、それはそうですよね……。い、いや!  あのでも」

山田さんも困惑した顔で慌てているし。


まぁこの部長さんはとっても一途なんだね。山田さん上司にこんなに愛されているなんていいんじゃない。


困ったような顔はしているけど山田さん、さっきみたいに眉間のしわはなくなっているね。それにみんなも殺気立った感じは消えちゃっているみたい。これでみんな納得してもらえたのかな?



だといいんだけどね。

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