第10話 魅惑の部長雨宮マリナと関わりたい女子高生 ACT2
まぁなんと言うか押しが強いと言うか隙のねぇ女子高生だ。
俺のオタク趣味に若干引き気味ではあったが、さほど気に留めた様子はなかった。
まぁ俺がヘコんだところで周りが同情してくれるはずもないのは分かってはいるが……。
しかしだ、雨宮部長のあの展開は正直驚いた。しかも月曜日に顔を合わせのが非常に怖い。
あれこれ詮索されそうだ。
「あのぅ、私なんかまずいこと言っちゃいましたか? さっきからずっと黙っていますけど」
と繭が心配そうに俺の顔を覗いてくる。
「いや別にそういう訳じゃねぇんだが……」
「もしかして何か悩み事でもあるんですか?」
と雨宮部長のことを知らない繭はのんきな口調である。
「ああ、まぁちょっとな」
「そうなんですか? でもなんか山田さんっていつも気だるそうにしているけど、今日は一段とひどいですよ」
そういいながら繭は俺の額に手を当てた。
「おわっ! お、おいっ!」
いきなりのことに俺は驚いてしまった。
「あ、熱はないみたいですねぇ」
いやだからそういう問題じゃねぇだろ!
「お前、いきなりなにするんだ!」
と思わず突っ込んでしまった。
「何って……熱はかってみただけですよ」
こいつ……自分が何をしたか分かってねぇのか? ていうか……恋愛経験の無い男はこんな接し方したら勘違いするぞ。まぁ俺には関係ないがな。
繭の容姿は悪くはないと思う。普通に可愛いし、スタイルも悪くない。
しかしだ、恋愛経験の無さがこういう行動に出てしまうんだと俺は思う。
「繭……お前さぁ」
俺がそう言うと繭は急にシュンとした表情になった。そして下を向いてしまったのである。
ん、なんだ? 俺なんかまずいこと言っちまったか? いや別に悪いことじゃねぇけど。
「あのぅ……私ってやっぱり変なんですかね?」
「いや変て……」
そう言いかけたがやめた。
「まぁ、そうだな。あんまり男の体にベタベタと触らねぇ方がいいぞ」
「そうですよね……やっぱり私って変なんだ。でも山田さんなら大丈夫だと思ったんですけど」
「いや俺は男だぞ! 他の男にこんなことしちゃダメだろ」
すると繭は下を向いたままこう答えたのである。
「……しないもん」
いやだからそういう問題じゃねぇだろうが!
「あのなぁ……」
「だって、他の人になんて絶対しないもん!」
いや、だからそういうことじゃなくてだな。
「お前……もうやめとけ。俺を勘違いさせる気か?」
「えっ!」
繭は下を向いていた顔をこちらに向けてきた。その頬は少し赤くなっているように感じたが、やはり気のせいだと思う。
「あのなぁ……」と言いかけたがやめた。
こいつには何を言っても無駄だと思ったからだ。
「まぁいいや」
なんか話がよりややこしくなりそうだ。
ま、とりあえずコーヒーでも入れようか。
「なぁ繭お前もコーヒー飲むか?」
「うん」と繭は返事を返した。
コーヒーサーバーに挽いた豆と水をセットしてスイッチを入れるとしばらくしてこぽこぽと音がしてコーヒーのいい香りが立ち上ってくる。
その間繭は俺の部屋の中を興味深々に見渡していた。
「ねぇねぇ、山田さん。このゲームってものすごくいけないような題名なんだけどとってもエッチなゲームなんですか?」
繭が手にしていたのは(夜の病院ナース事情)パッケージのイラストがもろエロ系のパッケージである。
「ええっと……それはだなぁ」
「あっ! これなんかもエロそうですねぇ。こう言うゲームしかないですねぇ」
「いやいやそんなことはないぞ! ほら、シューティングゲームもあるし、RPGだってあるじゃないか」
「ふぅーん。そうですねぇ―。でも山田さんはほんとエッチなゲームがお好きなようですねぇ」
なんか嫌味と言うかなんと言うかあざ笑うかのように繭は言う。
「軽蔑したか?」
「別に軽蔑なんかしていませんよ。男の人ってこう言うもんなんでしょうから。でも見事に18禁のゲームしかないところは圧巻ですねぇ。私ゲームってあんまりやったこと無いんですけどこう言うのも興味はありますよ。18禁ゲーム。で、私もう18歳……出来ちゃいますねぇ」
繭のにヘラとした顔を見てゾクッとした俺である。
そんなことを話している間にコーヒーが出来上がった。
出来上がったコーヒーをカップに……マグカップ俺の分1個しかない。来客用なんて言うものはこの独身独り身の俺だ特別家に来るような奴もいねぇし用意なんてしていねぇ。
ふと目についた俺があんまり使うことのない、しぶい柄の湯飲み。俺、これでいいか。マグカップとしぶ柄湯飲みにコーヒーを注いで。
「砂糖は必要か?」
「うん、めちゃ甘くして」
「あまくってどんくらいだ?」
「スプーンで3杯くらい。ミルクもお願いしまぁ――す!」
ミルク? そんなもんはねぇ基本俺はいつもブラックだからそんな手間はかけねぇんだ。
「ミルクねぇんだけど」
「……じゃいい」
「出来たぞ」
「はぁーい」と返事をして繭はキッチンに来た。
そしてマグカップの方を手渡すと。
「ずいぶん渋いですねそのカップ……ていうか湯飲みですか」
「ええっと。まぁな。カップそれ一つしかねぇからな」
「うむ、そうですねぇ。この台所片付いているんじゃなくて何にもないんですね」
悪かったな何にもなくて。今まで俺はこれでやってきていたんだ必要がなかったんだよ。
繭はコーヒーを一口口にして「あち!」と言いながら俺の顔をじっと見つめた。
「ねぇ山田さん……今日、お買い物行きませんか?」
「買い物?」
「うん、必要なものかい揃えましょう……二人分」
「二人分?」
「そうですよ。ここには山田さん一人しか住んでいないけど、これからは二人の家になるわけですから」
「……はぁ」
繭の言っていることがいまいちよく分からない俺である。
しかし、この展開はどう考えてもまずいだろう。こんな可愛い女子高生を家に住まわせることになるなんて……ありえねぇ!
「ちょっとまて! おめぇここに住み込むつもりなのか?」
すると繭はまたシュンとした顔になって下を向いてしまった。
そしてか細い声で俺の問いに答える。
「……だってそうしないと家賃とか水道代とか光熱費とか電気代……いろいろお金かかるじゃないですか」
「いや、それはそうだが……」
「なんてね。言ったじゃないですか冷蔵庫使わせてもらう代わりにご飯作りますって。ここに住むことはないですけどお料理作るにも最低限必要なものもあるし、……ご飯も……一緒に食べたいかなぁって……駄目ですか?」
「駄目って……」
もうこれはすでに決定事項であるかのように俺は感じているあたり、この子にはなんか勝てないと言うか憎めないと言うかなんだろうか。返事は。
「……はい」
としか言い返せなかった。
「やったぁ!」と繭は手を上げて喜んで見せた。そして俺のところにやって来てそのまま抱き着こうとしてきたが……俺はとっさに身をかわした。
だってまだコーヒー持っているし、もしこぼしたら大変だろうが。
「おい! おめぇ何考えてんだ?」
「え? いやだから嬉しいからそのぉハグを……」
「いや違うだろ」と突っ込んでしまった俺である。
こいつの考えていることはどうも理解できねぇなぁ……なんかいつも間逆のことをされるというかなんというか……。
「それじゃ、行きましょ。お買い物!」
にんまりとした顔で言う繭である。
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