シンなる旅路 【第一部、外伝】 ★修正完了済み
飯屋クウ
第一部 再誕の鼓動
第一章 最初の旅仲間
第1話 街①
砂嵐を抜けた先に視えるは街。
どこにでもあるような殺風景な入口の隣には、目印となる誰かを模した銅像。砂嵐の影響でボロボロとなり、人かどうかも怪しい。
また入口にはなかったが、街の外側には、長く大きく白い壁が反り立っている。砂嵐から身を守るため、あるいは街を目立たせるための防壁と考えられる。
銅像を通り過ぎた先、下町のような場所からさらに左奥に、立派な大きい建物が幾つか点在している。一番豪華な建物に住んでいるのは、この街の支配者たる人物なのだろう。
自分とは到底不釣り合いな人物が住んでいるに違いない。考えても無駄。
今考えるべきは───
(お腹すいたな)
腹ごしらえ一択。
風に揺られ、食欲を誘うようなニオイが鼻を突く。
意外と賑やかな雰囲気な街の中を通っていく。左右に店が立ち並び、道の真ん中を歩かせられる感じだ。市場か屋台か、似たような店が所狭しと並んでいる。特産物、旬の食材、加工品などを販売して、収益を得て、生計をたてる。
売上の一部は、お偉いさんへの上納となっているのだろう。
この街は、よくある街の形態を成している。
随分前に訪れた都市は、ここより発展はしていたが、労働環境が良くなかった。油まみれで、機械仕掛けに動く建物がたくさんあり、一度入都すると迷路みたく目的地に辿り着かない。
同じように迷い込んだ経験は前にもあったが、あれは森の中。
生活感のある場所とは、また大きく違うもの。
(労働環境的には
機械都市は、人以外も働くという珍しい都市のこと。人間に、よく似たロボットが働き、その人間はというと蚊帳の外。ロボットが働くことで、生産効率が上昇することは理解できる。しかし多数稼働している反面、一般人の働き先は少ない。浮浪者や路上生活を余儀なくされている人もいて、デモ活動もあったりした。手助けを必要とする人は多く、いままで訪れた場所の中では、トップ5に入る忙しさだった。
(彼女も元気にしてるといいけど....)
ロボット自体の再現度について触れれば、機械都市は、他と比べても頭1つ上の完成度だった。卒なく動く様は驚愕を禁じ得ないと、今でも思ってしまう。
(以前はもっと詳しかったはずなのにな...)
記憶を辿り、ゆっくりと思い返せば、眠った知識を思い出せるかもしれないが、生憎そういう気分ではない。
それに、時は戻らない、夢物語。
意気消沈した気持ちに追い打ちをかけるように腹が鳴る。
いつの間にか、屋台の前で突っ立ってしまっていた。
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