第2話 出会いの春 ②
「あの、甲斐君。これ、だ、誰にも言わないで。」
「別に言わないよ。」
これに関しては絶対の自信があった。
理由は聞かないで欲しい。頼むから。
そして、地震で散らかった部室を片つけながら、彼女は話し始めた。
「は、初めて未来が見えたのは小学1年生の時だった。午前中だったかな。急にイメージが浮かんで来たの。理科の授業で試験管が割れるイメージ。」
「なるほど。」
「そして、次の日の理科の時間に同じクラスのここみちゃんが試験管を割ったとき、私は強烈なデジャブを感じたの。同じようなデジャブな体験がそれから何回も続いた…」
「うん。なるほどね。だから、今日は地震のイメージが浮かんだから机の下に隠れていたということか。」
「はい。あ、な、なんかいきなりいっぱい喋ってしまってご、ごめんなさい。」
「別に大丈夫だよ。」
「こ、この話、はじめて人にしゃべったの。今まで、誰にも信じてもらえないと思ったから。」
「篠崎さん」
僕は、作業の手を止めた。彼女も、それに気づいて手を止める。
「今まで、そんな秘密を抱えて生きてきて、誰にも話せなくて、つらい時もあったと思う。だけど、これからは抱えきれなくなったら僕にも話してほしい。力になれるかはわからないけど一緒に抱えることはできるから。」
あれ、僕今勢いで長々としゃべってしまったが結構な発言をしてしまったのかもしれない。
「甲斐君。…ありがとね。ちょっとお手洗い行ってくる。」
彼女は、そう言って部室を後にした。
しばらくして彼女が戻ってきた。目元が赤くなっていることは指摘しなかった。
それから、彼女の未来予知についての詳しい話を聞いた。
・未来予知のイメージは不定期で浮かぶが、具体的な時間や内容は分からないということ
・その日の浮かんだイメージに関係するできことが、ほとんどその日に起きるということ。
・上記の例外としてイメージにもやがかかるとそれは少し未来の出来事ということ。
大まかにまとめるとこのような内容だった。
「篠崎さん。質問してもいいかな。これって未来を変えれるってことだよな。」
「う、うん。今日も机の下にいなかったら怪我をしてたと思うから、未来を変えられることは出来るんだと思う。」
「なるほどな。」
それから、しばらくして部室の片付けが終わったので帰宅することにした。
「今日は、ありがとね。あの、よ良かったら一緒に帰らない?」
「うん。もちろん。」
少し、クールに対応してみたが内心はお祭り騒ぎだった。
彼女に心の内を悟られないように、脳内のお神輿をそっとしまった。
~~~
次の日のお昼休みだった。
教室でお昼ご飯を食べるという上級ミッションを放棄して、いつものように使われていない空き教室でご飯を食べようと廊下に出ると後ろから小さい声が聞こえた。
「か、甲斐君。部室で一緒に食べない?」
「え、いいの?」
「え、逆にいいの?」
「もちろん。篠崎さんこそ本当にいいの?」
「うん。甲斐君も無理してない?」
なんだろう。一生このやりとりしてたい。
幸せラリーを終え、2人で部室に向かいご飯を食べようとお弁当を開けると篠崎さんが言った。
「あのさ、か、甲斐君に大事な話があるの。き、今日の朝からずっと言いたくて。」
あれ?これは?まさか?嘘だろ。
「き、今日の朝、イメージが見えたの。」
「え?」
「今日、この学校で誰かが窓から転落するイメージが。」
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