暗躍するのも君となら。
枯れ尾花
第1話 出会いの春①
もしも、友達の少なさでライトノベルの主人公が選ばれるのだとしたら、僕は真っ先に選ばれてもいいと思う。
なんせ、入学から三週間経っても誰とも友達になれなかったからだ。
僕こと、
だが、そろそろ決めなければいけないこともある。
それは、部活動だ。
私立薫高校では生徒全員が部活に入らなければいけないルールがあり、友達0という極めて特殊な立場にある僕もなんとこのルールに適用されているらしい。非常に困ったものだ。
「非常に困ったものだ。」
刈谷先生が、そうつぶやく。
そう。このクラスで僕は部活動を選んでいない最後の一人になってしまったため、職員室で担任と面談しなければならない事態になっていた。
「あー、そうだ。園芸部はどうだ?」
「園芸部ですか?」
「あー。具体的に何をしているかという質問には答えられないんだが、部員が少ないしきっと歓迎してくれると思うぞ。」
そんな活動も不透明で部員も少ない部活を進められて、誰が、首を縦にふるのだろう。全く舐められたものである。僕は断固拒否するつもりで声を高々とあげた。
「あのー、ちょっと園芸部は、、、」
「じゃあ、今日の放課後見学な!顧問の先生に伝えておくな!あー、そうか。私が顧問だった!すっかり忘れてたな。ハッハッハ。」
そして、僕の精一杯の反抗もむなしく、放課後顧問でさえ活動内容を見通せていない園芸部に見学に行くことが決まった。
~~~
放課後。
一度は、このまま全容が明らかになっていて非常に安全性も高い自宅に帰ろうとも思ったが、刈谷先生に何を言われるか分かったものではなかったので、おとなしく園芸部へと向かった。
「失礼します。」
中には、誰も居なかった。
まさか、部員は少ないと聞いていたが0人という大胆な叙述トリックをかまされたのか。
そんな刈谷先生の信じられない奇策に恐れおののいていると、机の下に小さな人影を見つけた。そっと覗くと、1人の女子生徒が体育座りで身を潜めていた。
「あれ、か、甲斐君?」
見たことのある顔だった。
あ、そうだ。同じクラスの名前は確か
「篠崎さんだったよね?よく、僕の名前分かったね。」
「う、うん。席近いから。」
彼女は、
身長は、平均的よりやや低めで、僕の肩ぐらいまでの大きさだ。
性格はおとなしく、僕ほどではないが友達も少ない印象だった。
僕と決定的に違うのは、その可愛らしい顔と優しい笑顔でクラスの多くの男子を虜にしているという所だ。
まだ、誰かが告白したという話は聞かないがそれも時間の問題だと思う。
「篠崎さんって園芸部だったんだ。」
「そ、そう。は、入る部活に悩んでたら刈谷先生にここをオススメされて。」
なるほど。僕だけが刈谷先生の餌食になったと思ったが、篠崎もその1人だったのか。
「甲斐君、たどたどしくて、ごめんね。私、あんまり男の人と話したないから慣れてなくて。」
「大丈夫だよ。全然気にならないよ。」
本当に大丈夫。僕は、人としゃべることに慣れていないから。
「ところでさ。篠崎さん。1個聞いてもいいかな。」
「は、はい。な、なんでしょうか!?」
「なんで、机の下に身を潜めているのかな。」
「あ、そうだった!甲斐君も隣きて早く!」
篠崎さんは、隣をちょんちょんとゆび指した。
良くわからないが、郷に入っては郷に従えという言葉を座右の銘にしている僕は彼女の言うとおりにすることにした。
彼女の隣に座ると、肩まで伸びたさらさらの髪からふわっと甘い香りがした。
「多分、そろそろだと思うんだけどな…。」
香りに気を取られていた僕だったが、この状況の事を思い出し、
「そろそろってなにが、」
次の瞬間、突然地面が揺れ始めた。
地震だ。
棚の上に置かれていてた花瓶や本が次々と落下してくる。
僕と篠崎さんは必死に机につかまり揺れが収まるのを待った。
その後、揺れは10秒ほど続き、なんとか収まった。
「篠崎さん!大丈夫!?」
「は、はい。大丈夫です。」
2人で机の下から出て、散らばった部屋を眺める。
その後、放送がかかり一度安全確認のため体育館に集められ、
それが終わると2人で園芸部の部室に帰ってきた。
「あのさ、篠崎さん。」
「か、甲斐君。」
彼女は、僕が質問したい内容を察してこう答えた。
「わ、私、未来が見えるんです。」
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