16日目

 雪が私を認識させてくれる。私は、今の幸せを噛みしめている。今、私の隣にいるのは、私の「好きな人」である。要するに、私の初デートである。浮かれている私を落ち着かせるべく、雪は寒さをもって、私に少しばかりの認識と、やはり少しの興奮をもたらす。

「…寒いね」

私がそう言うと、隣の彼は、「そうだね」と、ただ一言だけ。今日に期待していたのは、私だけかもしれない。実を言えば、付き合ってはない。

「…あ、ツリーだ…」

彼のいる方と逆のほうを見ると、綺麗なクリスマスツリーがあった。

「もう、クリスマスになったんだもんね…」

クリスマスが終われば、私たちは卒業まですぐ。私は、カバンの中に入れていたプレゼントを取り出し、彼に突き出した。

「はい、メリクリ!」

私は、元気に言うと、プレゼントから手を離した。

「私、そろそろ帰らないと、晩御飯までには帰るって言ってるから、じゃ、またね!」

そんなのウソ。私は少し熱くなった目を隠すように、走り出した。

「なあ」

彼が突然口を開いた。

「俺からのプレゼント、いらない…?」

…彼はプレゼントをカバンから取り出した。

小さな袋を受け取り、中を見てみると、ネックレスが入っていた。

「…まあ、似合うだろうし」

彼は恥ずかしそうに言った。頬は赤い。

「ありがとう…?」

袋の中に、何かもう一つ入っているのに気が付いた。

「それは、家に帰ってからのお楽しみだ」

そういうと、彼は「じゃっ」と言い、どこかへ行こうとする。

「…ここで見てやる!」

そういうと私は、袋の中のそれを取り出す。


「好き」


たった二文字が、そこにはあった。


 あの時のことは、今でも鮮明に覚えている。あの後、彼を引き留めて、泣きそうになりながら私の気持ちを伝えた。今も、彼は私と一緒にいる。

「あ、雪…」

あの時、隠れていた恋心を、白息とともに、外に引っ張り出してくれた雪は、まだ、私たちを繋いでくれている。

「…今年のクリスマスも、一緒だね」

「…ずっと一緒だろ…」

「…え」

彼は、あの時のような袋…ではなく、箱を取り出した。

「…僕と…」

私はこの日を、今後一生忘れることはないだろう。今度の雪は、私をはっきりと認識はさせてくれなかった。

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