第11話 tips:蔵書【召喚魔法の基礎知識】より
※説明回です。読まなくても物語の進行に支障はそんなにありません。多分。
さて、この本を手に取った者ならば多かれ少なかれこの魔法に興味があるのだろう。
ではまず、正しい召喚魔法についての基礎知識を授けることにする。
既に知っている者は、第55頁まで飛ばしてもらって構わない。
『召喚魔法』
それは読んで字の如く、何かを召喚する魔法である。魔物、人、さらには無機物まで、理論上魔力があれば神々すら召喚することができる。
そんな召喚魔法は、大まかに二つのグループで分けられている。
一方は対象をある程度、もしくは完全に限定して召喚する『限定召喚』。
もう一方はほとんど対象を絞り込まずに呼び寄せる、『無指定召喚』。
『限定召喚』は種族名や地域、姿や固有名詞などを設定して召喚する魔法だ。
例えば、【〇〇湖の、ウンディーネ(水精霊)の誰々】や【火属性の鳥型の魔物】といった具合である。
これの利点はもちろんある程度以上には望んだ結果が得られるところであり、柔軟性に富みながらも不確定要素の少ない術ゆえ、多くの術師がこちらの術の使用を望んでいる。
が、この術にはいくつか難点があった。
まず、術者側が召喚対象の事を知っていなければならないことだ。
魔法は術者のイメージを元に喚ぶモノを決めるため、特に召喚対象を限定しようとすればするほど鮮明なイメージが必要になる。
知識やイメージが不鮮明なままだと、とある精霊を召喚しようとしてスライムや似た姿形の魔物が召喚されました、などということになりかねない。
そして次にかなり魔力消費が多いことも、大きな欠点だ。いや、これが恐らく最も高い壁だろうか。
色々あるが基本的には絞り込み条件の細かさ、術者と召喚される側の距離、召喚されるものの大きさや強さに応じて必要な魔力が跳ね上がっていく。
準備をしていざ召喚しようとしても、魔力が足りなすぎて失敗するのはよくある話だ。
以上の事から、限定召喚の使用率はそこまで高くない。
殆どの術者が満足に発動できない為、泣く泣く無差別召喚を選ぶ者が大半であった。
一方の『無指定召喚』はといえば、指定するのは「人族」、「魔物」といった種族よりも大きな枠組みの分類や身に宿す属性といった大きな範囲を1つだけ決めて行使するので、術者のイメージに左右されることなく発動できる。
術式が単純で起動とこちらに召喚する分の魔力しか必要ない為、消費魔力が非常に少ないのも大きな利点だろう。
…総じて限定召喚と比べて、と注釈は付くが。こちらもなかなか高難度であることは忘れずに。
そしてこちらのデメリットは当然、限定召喚よりも楽できる分、何が飛び出して来るかわかったものでは無いことだ。こちらはもはやくじ引きである。
各自己の運を信じることだ。
ちなみに、無指定召喚は喚ばれる側で拒否や割り込みをする事が可能なため、不発に終わったり全く関係のない変な奴が出てくることもたまにある。
とくに魔獣や精霊等は拒否されたり、予想外な存在が喚ばれることが多い。
強い魔力を持つ存在は選り好みが激しく、己と合わない波長の魔力を拒む傾向がとても強いからだ。
ただ、その分波長が合えば素直に応じてくれることが多い。
それどころか喚ばれる側で誰が喚ばれるかの争奪戦が始まるほどだ。
そのため、召喚される存在はいろいろと相性が良い事が多い。
極希にかなりの大物が喚びかけに答えて、その強さに比例したとんでもない魔力を持っていかれるがこれは名誉なことだと思って各自どうにかしてもらいたい。
さて、長々と召喚魔法について書いてきたが、最後はオマケの応用編だ。
実は、召喚する際に必要な魔力は、周囲に漂う魔力で肩代りできるようだ。
ようだ、というのはまだ実証実験ができていないからである。
なぜなら発動中の召喚魔法を維持したまま、周辺から魔力を掻き集めるのは卓越した魔力制御の技術が必要で、私はこの世でも数人程度しか出来そうな人物を知らない。
そして、それらの人物は私程度が実験を頼める立場には無いのだ。
ただ、そのうちの一人、我らが宿敵とされる魔王から直接話を聞けたので、間違いではないだろう。
彼曰く、『他の魔法を使いつつ、同時に空間の魔力を自分の魔力に変換しながら集めるコツさえ掴めればそこまで難しいことではない』だとか。天才肌か。それができたら苦労はしない。
ちなみに制御を失敗すると周囲の魔力が周囲に急速に拡散…つまり、爆発するらしい。
確かに、魔力を集めるという行為は魔力を爆発させる系統の魔法に似ている。
『古代魔法に耐えられる障壁を張れたらいくらでも練習できるぞ』彼は、そう言っていたがやはり天才という人種は頭がおかしいらしい。
余計に難易度が上がっているではないか。
とりあえず、背伸びして失敗すると命はない。
読者諸君は大人しく自分の魔力で発動するか、安全に制御できる量の魔力を肩代わりさせ、徐々に慣れることを推奨する。
ちなみに現段階では宮廷魔法師クラスで中級魔法1発分程度の魔力しか並行して制御できない模様だ。
あと40発分くらい制御できれば中位以上の魔物も呼べるそうだが。
まあ、諸君も頑張りたまえ。
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